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薄く笑みを浮かべるセフィロスを睨み付けてダガーを引き抜いた時、それは突然に容姿を変えて醜悪なモンスターが現れた。
「こいつは…」
「あれが、すべての始まり…」
エアリスがそう呟いてロッドを構えた。少し遅れて駆け寄ってきたクラウドもバスターソードを引き抜いて、私たちは頷きあってそれに立ち向かった──。
激しい攻撃と、おまけに触手のようなものまで飛び出てきてかなり苦戦を強いられたものの、クラウドの重い一太刀を最後にそのモンスターは霧となって消えた。それに代わって現れたのは、黒いローブの男。伍番街、子どもたちと一緒に見た男とよく似ている。そのままぐったりと倒れ込み動かなくなった男に、瞬時に理解した。
ああ、これ…レプリカと同じだ。実験で創り出された、紛い物のセフィロス──。
「……ん、?」
「っバレット…!?」
男を見ていたら、突然バレットが飛び起きて私たちは目を見開いた。慌ててその元に駆け寄って、長刀が突き刺さった箇所をみて…。やっぱり、傷は何事も無かったかのように塞がっていた。
「バレット、怪我は…?」
「………ああ、なんともねえ」
ティファが心配そうに顔を覗き込んで、バレットも傷に手を触れて、ポカンと惚けたようにそう答えた。ほっと息を吐き出して、ふとクラウドがいないことに気付いた。
「クラウドは…?」
「…あれ、さっきまで…」
ティファもきょろきょろと辺りを見渡すけれど、やっぱりクラウドが見当たらない。もしかしてセフィロスを追って…?そう思って、立ち上がったバレットも一緒に私たちは再び屋外のへリポートへ向かった。
既にへリポート上空には、本家アバランチのヘリがホバリングをしていた。向こうからクラウドが走ってくるのが見えて、無事で良かったと安堵する。
「バレット、大丈夫なのか?」
「おう、この通りよ。で、やつは?」
「…逃げられた」
「そうか…。俺たちもとっとと逃げようぜ」
バレットの言葉に頷いてヘリを見上げた瞬間、案の定とでも言うのか、後ろから現れた神羅のヘリの砲撃で本家アバランチのヘリが撃墜され、炎を上げて地上に落ちていった。そう簡単に、逃げさせてくれるわけないか。溜息を吐き出して、屋内に駆け込もうと走り出したら、そのヘリから真っ白いスーツに身を包んだ金髪オールバックの男が降りてくるのが横目に見えた。
「ルーファウス神羅。プレジデントの息子だ」
「…俺が時間を稼ぐ。先に行ってくれ」
「バカ言え!俺も残るぜ!」
「頼む、バレット」
「……わかったよ」
「ナマエ、必ず戻る。…下で待っててくれ」
「…うん、待ってる」
少しだけ目を細めて言われたその言葉に、私は微笑んで頷いた。大丈夫、クラウドのこと、信じてるから。
中央ホールを通ってメインエレベーターで下まで降りる。途中、クラウドがどうしても心配だと言ったティファを、無理しないようにと送り出して、それ以外のメンバーがエレベーターに乗り込んだ。
「あいつらは大丈夫なのか?」
「そんな簡単にくたばる奴らじゃねえ。だから──」
「バレット。こっちの心配、したほうがいいかもね」
「あ?…おいおい、嘘だろ…?」
二基並んだエレベーターの、私たちが乗っている方とは別のエレベーター。そこにいたのは神羅の大型兵器で、さらには完璧に私たちに向けられている銃口。これはちょっと、まずいかも。
「みんな伏せて!」
浴びせられる銃弾を姿勢を低くしてなんとか交わしながら、エレベーターが下までつくのを待つ。着いた瞬間に中から私たちは飛び出した。とりあえず蜂の巣になることは避けられた。
「…クラウドたちが来るまで、耐えないとね」
「うん、ナマエ、頼りにしてる」
「ちくしょう!行くぜ行くぜ!」
「そうだな、さっさと片付けよう」
それぞれ頷きあって、私たちは目の前の大きな機械兵器に斬りかかった───。