07
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普通、これからいざ相手を攻撃しようとする時、人間は無意識の内に纏う空気を変えてしまう。それが、ナマエには全くと言っていいほど無かった。気が付くとバスターソードとナマエのダガーが触れていた。地面を軽く蹴る音で反射的に構えたことによって難を逃れたと言ってもいいほどに、それは一瞬だった。
「……おい、なんのつもりだ」
「夢と、誇り。大事なものを、守るための、ね」
「は?」
至近距離でナマエから静かに吐かれた言葉。どこか懐かしく、胸が締め付けられるような感覚を覚えて内心首を傾げた。
俺は、この言葉をどこかで。
「なーんて。クラウド、すごいね。止められたの初めて」
ナマエはそう言うと、ダガーを下ろし腰の鞘に差して、両手を上げた。眉間に皺を寄せたままナマエを見ると、ナマエは首を傾げて笑った。ただ純粋に、綺麗に。
「……はぁ。あんた最初から、俺が止めることを知ってただろ」
「なんのこと?」
惚けてみせるナマエに、更に眉間に皺が寄る。多分こいつは、俺がバスターソードを抜く時間をわざと作った。あのスピードだったら本来、俺が構える前にダガーが喉を切り裂いていてもおかしくはなかった。それを、あえてしなかった。何から何まで訳がわからない奴だ、と思う。それにセブンスヘブンで、声を漏らすでもなく突然ただ静かに流した涙も。どこか興味を惹かれるような、心当たりのない感情が沸く。内心それに首を傾げながら、目の前に立つ驚く程整った顔立ちのナマエに向けて、深い溜息を吐き出した。
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「はい、着いたよ。ここ、天望荘。しばらくはここにいるんでしょ?」
「ああ」
目の前に建つ古いアパートを指さして、部屋に入るように促す。余計なことをしちゃったからか、あの後クラウドの口数が余計減って、嫌に気まずかった。私のせいなんだけど、と少し反省する。自分でもなんであんな事したのかは分からないけど、多分クラウドになめられたのが気に食わなかったんだと思うことにした。いや、なめられてたかは知らないけど。
「じゃあ、ね。おやすみ、クラウド」
とりあえず疲れたから早く帰って寝ようと、クラウドに簡単な挨拶をして自宅へと踵を返した時、突然ぐい、と腕を引っ張られ身体が後ろに傾く。
「っ?びっ、くりした。どしたの…クラウド?」
一体誰が、というよりも他に誰もいないんだから犯人はクラウドしか有り得なかった。まだ何か用があったのかと、未だ私の腕を掴んだままのクラウドを窺い見る。
「、いや。あんたの家は」
「へ?この奥の通りだけど…」
「送る」
「え?」
そう言うや否や、腕を離してクラウドは私が指さした通りに向かって歩き始めてしまった。いやいや、送るもなにもすぐそこだし、むしろ私の方がここ長いんですけど。
慌ててその背中を追いかけて、逆に私がクラウドの腕を掴む。