06
「はぁ、ちょっと冷えるね、今日」
「薄着だからだろ」
「…そういうクラウドもかなり薄着だけど」
「鍛えてるからな」
「うわ、可愛くない反応」
「悪かったな」
天望荘、ティファが住むアパートに向かう道中、そんな取り留めもない話をする。会ったばかりなのに意外にも続く会話に、自然と笑顔が零れる。
まぁ、返ってくる反応はお世辞にも可愛いとは言えないけれど。
「クラウドは、なんでアバランチに雇われたの?」
「ティファの紹介だ。金になるからな」
「なるほどね。なんでも屋だってティファから聞いた」
「ああ」
ティファの話だと、クラウドは最近ミッドガルに戻って来たばかりだと言っていたから、何かとお金が入り用なのも頷ける。それに、アバランチに高い報酬が払えるかどうかは別として、傭兵家業の方が儲かるのは周知の事実でもあるし。
「…あんたは、只者じゃなさそうだな」
「え?…それ、どういう意味?」
突然降ってきた言葉に、訳がわからずクラウドを窺う。
「その腰に提げてる武器は?スラムでそこまで物騒な武器が必要とは思えない」
「あぁ、んー…。これは、護身用?何があるかわからないでしょ」
「…言いたくないならいい」
「あはは、半分冗談で半分は本気」
そんな言い分で納得するとは思ってもなかった。だから、私は右腰からダガーを抜いて、左足でとん、と軽く地面を蹴った。
「───っ!」
「わ、さすが…」
キン、と金属同士が触れ合う特有の音が辺りに響く。クラウドの喉元を目がけてダガーを突き付けたつもりが、咄嗟の判断で引き抜かれたバスターソードによって行く手を阻まれた。
「……おい、なんのつもりだ」
「夢と、誇り。大事なものを、守るための、ね」
「は?」
「なーんて。クラウド、すごいね。止められたの初めて」
大人しくダガーを下ろして、腰元に差し直す。もうやらない、という意味を込めて両手を上げ、にっこり笑ってみせる。
「……はぁ。あんた最初から、俺が止めることを知ってただろ」
「なんのこと?」
あれ、意外。そこまで読まれてたとは。確かに狙いは喉元だったけれど、ダガーを振り翳すタイミングはワンテンポ遅らせた。万が一、クラウドの反応が遅れて誤って本当に刺してしまわないように。まぁそんな心配は無用だったみたいだけれど。