short novel

祝福




 そもそも女神の与える祝福とは、勇者に本当に何かを授けられるわけではない。

 勇者の中に眠るものを引き出すのだ。

 それは、時に”自信”と呼ばれる。


 その女神、可能性の女神は勇者に何を与えれば魔王に勝てる可能性を贈れるのかずっと悩んでいた。

 この前の勇者には、”根気”を与えた。

 その前の勇者”希望”を。”夢”を勇者に与えたこともあった。

 しかし前回の勇者にそれを与えなかったのは、それを与えた勇者が戻ってこなかったのはあまりにも曖昧なものであると思い当たったからだ。

 それで具体的なものを与えようと思って”根気”を選んだのだが、どうやらそれも違うようだ。



 そのような経緯があり、可能性の女神は何を与えようか迷っていた。


 間もなく、夜が明けようとしている。先ほどとは別の順序でグラデーションがかかっていた。



 あと数時間後で、勇者がやって来る。可能性の女神は決断しなければならなかった。





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