short novel

某国の王女





 彼女が母国のさらなる発展のため、この国に嫁いでから三ヶ月。かの国が彼女の力で平和に栄えていたことは明白となった。

 彼女はそのように評価される未来を望んで、かの国を出たわけではなかったが、運命は変えられないようだ。


 しかし違う国の人間となった以上、母国であろうとも介入するわけにはいかない。それは、侵略と見なされ戦争になるだろう。

 せめて、民衆が選択できるように、母国から最も近い扉を毎日開放している。



 彼女は現実を悲しんでいたが、それが自分の正しい選択ではないとすぐに気づいた。


 まだ、全てが失われたわけではない。

 自分を信じて頼りにする者がいる以上、自分に役割があって何かできることがあるのならば、未来を悲観してばかりいてはならない。



 何よりも、母国にどれほど人が残るかということも、”あの子”が何を決断するかということも、未だに確定してはいないのだから。



 ”場合によっては、最悪の決断をしなければならないかもしれない。”



 業火の真紅を伴って、彼女の脳裏に一つの未来が映し出された。





某国の王女
未来での名は亡国の姫




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