囚われの姫編 「アリサ、何か楽しいこと思いつかない?」 「楽しいこと?」 私が今考えてるのはハートの女王のことばかりだというのにそんな余裕あるわけない。でも、そう答えるのは何だか悪い気もする。チェシュもいてくれたらハートの女王のふいをつけないかな。そんなことを考えながら私は言葉を口にする。 「これから楽しいことしようと思ってるんだけれどついてくる?」 「楽しいこと?」 途端に目がキラキラするチェシュ。わかりやすい。よっぽどお菓子配りが負担だったんだろう。 「まずは、壊せないといわれてるものを壊してみせるわ」 「それ楽しそう!」 「じゃあ明日すぐ準備だから、早く寝るのよ」 詳細は言わなくても、チェシュは暗闇に消えた。不安なことばかりだけれど、楽しみができた。いや、チェシュならハートの女王も手におえないかもしれない。 不安なことばかりだけれど、今日は疲れた。早く休むことにしよう。……眠れるかは別として。 背中を向ければ暗闇が形をもって襲いかかってきそうな気がしたけれど、ハートの女王がそんなつまらない決着を望むわけがないと無理やり納得させた。 不思議の国のありさ 囚われの姫編 2023.12.29 完結 prev/next |