不思議の国のありさ

ハートの女王編




 遠くで声が聞こえる。女の人の声だ。視界は真っ白で何も見えない。私の体は子どものように小さい。


『こっちへおいで、アリサ。一緒に遊ぼう』


 声は不気味なもので、私は近づくのをためらう。そうすると、また声は近づいてくる。


『そうか。では、お前の大切なものはもらった。時間が経てば経つほど不安になるだろう。私はいつでもお前を後ろから見ているよ』


 声が私の視界を黒く染める頃、先程とは違う、よく知っている声がいくつか聞こえた。



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