ついのべ

空におちる夢をみた
140字の文章 配布元・お題は後書きに記載


暗闇をきってきた。黄色の眼は確かにそういった。体はやせ細っているが立ち姿は堂々としていて貫禄さえある。見下されているような気分にさえなる。何不自由ない暮らしをしているはずなのに生きづらいという私を無言で見つめる。それでも明日を生きるのかという問いに私は今日も何もいえないのだった。
October.11


毎日会いに来た彼女はもういない。透けるような白い肌が恋しい。思えば毎日いたずらをされている気分だった。音もなく近づく彼女といるのは刺激的で楽しかった。でも、彼女のためにもこれでよかったのだ。たまには僕がいたずらしてもいいだろう。最後のハロウィンは楽しかったかい。お祓いは成功した。
October.31 後書き


ハロウィンの日に大人に秘密にして屋根裏の妖精に会うとすごいものがもらえるらしい。わくわくしながら階段をのぼる。トリック・オア・トリートと言えば光が広がって、虹の中に大金持ちの僕や、誰も倒したことのないゲームの敵を倒す友達。体がだんだん軽くなる。これは未来? それとも……。
October.31 後書き

日常の戦場
見知らぬ男は警戒される。顔を隠し服も着替える。母親は死んだように横になっている。標的は床を汚し暴れまわる。標的を静かにさせなければ! 必殺高い高い! 漸く穏やかな顔。柵の中に避難させ床の食べ物を片づける。起きた親戚の母親から報酬を受けとると戦闘終了。くまの着ぐるみから開放される。
October.9 後書き


退屈だ。何度めかの溜息が水面を伝う。一人漕ぐボートのオールを止めてしまえば、湖はまた凪いで暗い水底を湖面に映す。
この年になって青春の煌めきを追う気はしない。誰かのことを考えることさえ煩わしい。
少し前まで流行した身分違いの恋愛は現代では希少な故、今まで忌むべきものに向かう浅はかさが憎くさえ思えた。
求めるべきは刺激ではない。止まらない時の中でも、私が自分という存在を証明し続けることができる確固たる柱。それは直立でなければならず、固いだけではすぐ曲げられてしまうか折れる。
さらには、現状のようにただ岸に向かうだけではつまらないのだ。
水面に自分が作った波だけ浮かべてもつまらない。さてどうしたものか。
答えが出ないまま風を感じて漂流する。
それが生きるということの答えだと風が教えていた。
August.17

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