ついのべ



細身の男を追っていた。身幅の合わないスーツで余裕がある。人通りはまばら。柱に隠れながら後を追う。飄々と歩く標的は前触れもなく路地を曲がる。我々も直後に続く。先も道だが、男はいない。凝視しても見当たらない。貴婦人や身幅の合わないスーツの太った紳士が、呆然とする我々を追い抜いていく。

2024/05/22 後書き

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