ついのべ



退屈だ。何度めかの溜息が水面を伝う。一人漕ぐボートのオールを止めてしまえば、湖はまた凪いで暗い水底を湖面に映す。
この年になって青春の煌めきを追う気はしない。誰かのことを考えることさえ煩わしい。
少し前まで流行した身分違いの恋愛は現代では希少な故、今まで忌むべきものに向かう浅はかさが憎くさえ思えた。
求めるべきは刺激ではない。止まらない時の中でも、私が自分という存在を証明し続けることができる確固たる柱。それは直立でなければならず、固いだけではすぐ曲げられてしまうか折れる。
さらには、現状のようにただ岸に向かうだけではつまらないのだ。
水面に自分が作った波だけ浮かべてもつまらない。さてどうしたものか。
答えが出ないまま風を感じて漂流する。
それが生きるということの答えだと風が教えていた。

2021/08/17 

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