ついのべ



追いかけられているか逃げているか戦っているか落ちているかそんな悪夢ばかり見ている。その日の"敵"はシルクハットを取って一礼した。背中には尖った尻尾が見える。「いやあ、いい悪夢を見てますね。いいですよ貴方」訳が分からないまま私に向かってきた敵を尻尾で一掃する。「実においしそうだ」勘弁してほしい。私は子供でも若くも美人でもない。逃げようとせめて落ちようとするよりも"敵"のが速かった。苦痛よりも解放感があり絶望よりも一縷の光が見えた。気がつくと朝になっていた。その日から悪夢を見なくなった原因を未だに見つけられない。

2018/10/02 

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