ついのべ

空におちる夢をみた
140字の文章 配布元・お題は後書きに記載


長雨が止むのを待っていた。雨雲が夜空を隠す暗闇の中、天から僅かな光で線を描く。絶望というのは無。だが周囲にいろんなものがあることに気づく。冬目前の寂しさも深呼吸して落ち着いてみれば、風が流れてるのを少しずつ尊く思えるようになってきて。今頃の記憶が何年分も鮮やかに雨雲を染めていく。
October.31 後書き


理想が高すぎるとよく言われる。私にとっての普通はどうやら現実には存在しないらしい。顔はかっこよくなくてもいいし、身長は高くなくてもいい。目が綺麗な人ってそんなに難しいのかな。理解されない現状と巡ってこない運命。これだから、テレビで輝く推しに会いたくなる。夜に傾く空野中帰宅を急ぐ。
July.31 後書き


理想が高すぎるとよく言われる。私にとっての普通はどうやら現実には存在しないらしい。夕暮れの帰り道、ニャーと声がした方を見れば、三毛猫が1匹。猫みたいな人ってそんなに難しいのかな。そうか、私が猫みたいになればいいのか。次に告白してくる人が来たらそうしよう。気まぐれに返事をしてみた。
July.31 後書き


細身の男を追っていた。身幅の合わないスーツで余裕がある。人通りはまばら。柱に隠れながら後を追う。飄々と歩く標的は前触れもなく路地を曲がる。我々も直後に続く。先も道だが、男はいない。凝視しても見当たらない。貴婦人や身幅の合わないスーツの太った紳士が、呆然とする我々を追い抜いていく。
May.22 後書き


無意識で手が動いているという類の、細々と続く趣味がある。名声や金、誰かの共感等は不要。当時の自分以上に再現できる者など皆無だから。今日も花が綻ぶ様を、晴天の雲の軌跡を、新緑をそよぐ風を書き留める。数十年後だったとしても、私は閃光と共にこの一瞬の閃光を見る。それだけで十分であった。
May.2 後書き

prev | next
読んでいただきありがとうございました!!



- ナノ -