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80*

  私は連休明けの憂鬱な気分のまま職場へ向かう車を運転する。

 世間は新型コロナウイルス一色で、今年は異例の自宅にいるGWだった。家にいるから物足りないまま5日間を過ごしてしまった。

 外出は自粛だというのに、仕事は自粛にならないのか。そんな疑問を誰も解決できないまま、時は過ぎる。

 コンクリートの道路を何分か走っていると、鮮やかな色が目に入った。新緑だ。そうか、この時期は新緑だった。木々がこのような色になるのだった。仕事の疲れと連休も外出自粛ということですっかり忘れていた。

 私はこの季節が一番好きだ。木々の新緑が目に痛いほど輝いて、初夏を照らす。その生命力、未来への喜びは毎年私の気分さえも変えていく。先程までは何もできないような自分でも、何かと向き合いたくなる。変わり映えのしない毎日でも、何でも成し遂げられるような気分になってしまう。

 道路沿いの新緑に囲まれハンドルをきると、水を張った水田がところどころに見えた。こんなご時世でも変わらない。まだ苗が植わっていないもの、小さな苗がぴょこぴょこと葉を覗かせているもの。そこの間に映る青空。本物の青空よりも煌めきを孕み、青空へ向かって輝きを還す。

 ああ、いい風景だな。これが運転中でなければ、文章を書いてしまいそうなそんな勢いがある。

 しかし残念なことに、現実はこれから仕事。


 案の定寝坊して渋滞の時間に巻き込まれる。それでも、木々の新緑に見守られて幸せな気分のまま車を走らせていた。