52 「おはよう」 私が朝の光に目を細めていると、耳にやわらかな声が触れた。 「うん、おはよ」 私がゆっくり体を起こすと、なかなかはっきり映らない視界に彼の姿が映った。 「今日もいい天気だよ」 カーテンを開けると、優しげなけれども目に痛い青い光が見えた。 「……うん」 私が目をこすって開けようとするのをあきらめたのを見てからだろう、私の近くで弾力をもって揺れる。 「まだ怖い?」 さっきよりもやわらかな声と、それ以上にやわらかな手を頭の上に感じて肯定してしまいそうになった私は開ききらない目をそのまま閉じた。 「……もう少しだと思うの」 いつ落ちてくるか分からない空が、いつ青を違う色に変えてしまう雲が、いつ私を悲しみで濡らす雨はまだ怖いままだったけれど、強がりだったとしても、それでもそう言いたかった。 「いいよ。無理しなくても」 焦っている私をなだめようとしていたとしたなら、やわらかに私の頭をなでるその手は目的を達成している。 「いつかピクニックに行こう。花畑も見せたいな。あと海にも行って、船にも乗ろう。そしてもっと遠くに……」 「分かったよ」 私が目を開けると、おだやかに揺れる彼の姿に青い光が射していた。 この青い空に慣れてしまったら もっと遠い夢へ旅に出よう |