32 20XX年。俺たちは一昔前の映画のワンシーンのような現実に直面していた。 実際、これが映画だったらどんなにいいかって話なんだけれど。 科学的に明日が地球最後の日だと解明された。 混乱を避けるために理由は知らされていない。胡散臭い科学者がテレビで言った説は数えきれないほど。 しかし誰が何と言おうと、回避することはできない。何年もの間努力はしたが無理なようだ。 事実、地球脱出のために月に旅立った人もすでにたくさんいる。しかしその人数には制限があって、俺たちにその順番が回ってこないらしい。 まあ、難しい話は俺には分からないんだけどさ。 「そんな顔するなよ。明日死ぬって決まったわけじゃないだろ?」 何も分からないから、こんなに楽観的なことを隣にいる相棒に言えるのかもしれない。 「でも、明日で地球はなくなるんだよ」 「明日のことは明日にならないと分からないさ」 いや、俺が楽観的なのは何も分からないからそれだけじゃない。だからって自棄になってるわけでもない。 放課後よく寄り道する川原から眺める夕日は、いつもと変わらず真っ赤だった。 「科学的には、僕らの明日はない」 相棒は見るのが最後になるかもしれない夕日は見なかった。何か見えるのか川の流ればかり見ている。 「科学が何なんだよ」 「……えっ?」 「科学が何なんだよ!数字で何が分かるんだよ!俺たちは数字何かでできてないだろ。今から明日を失くしてどうするんだよ」 そう、俺が楽観的な理由はたった1つの希望から。相棒にはそれを伝えたかった。 「明日を失くすのは失くなった後でいいだろ!今から失くしてんじゃねぇよ」 相棒はやっと顔を上げた。その顔は夕日に照らされて赤く染まっていた。俺はそれが炎の色に見えた。 「そうだね。ごめん」 俺たちはしばらくいつも通りに沈む夕日を、いつも通り眺めていた。 これが運命だろうと まだ何も失ってはいないから |