「により」未来設定・南涼+チャンスウ+照美 会話文で埋め尽くして 1/2 『明日、遊びに行くからね』 唐突に、奴は言った。言った、というのは違う? まあ、メールだったもんな。引っ越し先の住所は知ってるから、と俺たちは特に何もしなくていいらしい。時間は昼頃に。一方的なメールは一方的な約束を取り付け、一方的に終了した。 そして、多分来るだろうなという時間に合わせて飯を作った。今日は前々からの風介の要望でもあるキムチチャーハン。腹が減った時に食べられるよう、少し多めに作っておいた。 風介はベランダに出て、エントランス付近を監視している。目立つのが来たら間違いなく奴だ。風介は新調したばかりの眼鏡を装着して、イーグルアイだと言わんばかりに目を細める。 俺は時間を気にしながらエプロンを脱ぐと、携帯が光っているのに気付いた。着信あり。あれーやっちゃった? 「晴矢! 怪しい奴を確認できたぞ!」 「俺見に行ってくるから、待ってろ!」 「わたしも行く!」 エプロンを椅子に投げ出し、ベランダから入ってこようとする風介を制し、玄関から飛び出した。エレベーターを待っている一分一秒も惜しく階段を一段飛ばしに駆け下り、喉に息が張り付いて苦しいという所でエントランスに着いた。 駐車場に見慣れない黒バイク。ヘルメットに隠れた顔が二つ、こちらを見る。 「酷いよ! 電話したのに!」 くぐもっているが、確かに奴の声だ。俺は言い訳をすると、もう一つのヘルメット野郎が見苦しいですよ、と呟いた。 「うるせーよ! てか、お前も来るなんて聞いてねえ」 「捕まってしまいました」 「友達は多い方が良いよね!」 「お前飯抜き」 「ええええ」 2/2 「髪を切ったんだな」 風介はアフロディを見て、そう言った。てか前に会ったの何年前よ? 3年くらい? アフロディは約3年前より、大人びて美人になった中性的なのに磨きがかかったというか。それなのにチャンスウは変わんないなー。ホント、全くといっていいほど。 「チャンスウはもふもふ具合が良くなったんだよー」 「知るか」 キムチチャーハンを出してやると、アフロディは口を尖らせた。はは、韓国生活でキムチなんて飽きるほど食ってるだろ。俺はその事も視野に入れて、今日の昼飯を作ったのさ。まあ、風介の事が最優先って事もあったんだけどな。 「食べないならいいぞー、別に無理しなくてもよー」 「うー、南雲くんが苛めるー」 「はいはい」 チャンスウのアフロディに対する扱いも相変わらずだな。 俺はチャーハンをもぐもぐしながら、セミロング・アフロディを観察する。しかし、この金髪でこのオーラ。世宇子中出身なのに母国は韓国って何、詐欺だろ。 「いーよ、勝手に冷蔵庫漁ってやる」 「お前、ほんっとフリーダムだな!」 アフロディの首根っこを掴むチャンスウはオカンだな。風介とテレパシーで会話をし、うんうん頷く。アフロディが落ち着いた所で、俺はまともに答えそうなチャンスウに質問をした。 「何、観光帰り?」 「いえ、今留学中なんですよ」 「聞いてないぞ」 「おや、聞いてませんか。基山くんと一緒の大学なのですが」 「嫌味か、トップ校」 「滅相もない」 「僕も一緒だよ!」 「嫌味か!」 全く。ブーブー言ったくせに綺麗にチャーハン食うんじゃねえよ。美味いじゃねえよ、くそ、嬉しいだろ、くそ。 「此処から家は近いのか?」 「少し遠いかな。バイクで20分」 「免許取ったのか」 「うんー。毎朝チャンスウとバイク通学」 「仲良いなー」 「同居中ですしね」 「え、何々お前らそんな仲!? うわやらしー!」 「奥さん聞きまして? 年若い男二人が同居ですって」 「君たちに言われなくないね」 「わたしたちは清い仲さ。なあ、晴矢。おい、目を逸らすな、おい、晴矢」 別にチャンスウと照美は付き合っているわけではない。 セミロング照美が書きたかっただけ。 虚言症 ↑お借りしました ←back |