※赤と青の番いと伝統の幻想ブン屋と巫女と魔法使い



今日は一日休みを貰った。一日休み、というのは珍しい。と言っても、香霖堂に来る客は元々少ないし、大抵は暇なのである。
香霖堂の店主の森近霖之助は快くガゼルに仕事を与え、下宿までさせてくれている人物だ。彼のおかげで此処、幻想郷での生活がきちんと出来ていると言っても過言ではない。ガゼルは彼に尊敬の念を抱きつつある。それは自分にとって中々ない感情であると思う。これは以前バーンが敬愛していると話した、人里の教師に抱いている思いと同じだ。それを自分は嫉妬したけれど、バーンは妬いてくれるだろうか。着いたら話してやろうと空を泳ぐ中、一際風が強くなった。吹き飛ばされぬよう体を固くした後、ガゼルの前にある少女が立っていた。立っていたというのは可笑しい。浮いている。

「ガゼルさんでいらっしゃいますね?」
「何か用か?」

黒いスカートが風に靡く。彼女は一見、女子高生のような格好である。それに不釣合いなのは、赤い三角形の帽子と下駄。下駄は異様に長い一本歯の物であった。

「初めまして。『文々。新聞』の射命丸文と申します」
「ぶんぶんまる……、ああうちで取ってる。集金?」

時折見かけるあの新聞だ。気がついたら新しい内容の物が置いてあるという、不思議な新聞。一体誰が配達しに来るのだろうか、霖之助に聞いた事があったが気にしなくても良いと咎められた。今まで彼が新聞の集金に応じる姿を見た事はない。もしや彼女は、取り立てに来たのではないだろうか。ガゼルは、財布は持ち歩いていない。残念ながら彼女に金を払う事は出来なそうである。

「あーそういう事じゃないです」
「え?」
「あのですねー是非、貴方に取材をさせて頂きたいんですよ」
「取材?」

首を傾げる。聞き慣れない言葉だ。文は呆気に取られるガゼルを見つめつつ、懐から手帖を取り出して万年筆を取り出す。万年筆を見るのは久しぶりな気がする。

「飛びながらでも良いですから、お話聞かせて貰っても良いですか?」
「何を話せば……」
「そうですねー。これから何処に?」

すいーと風の上に乗るように飛ぶ。文もそれについてくる。

「湖の近くに居る友人の所だ」
「友人? チルノさんや紅魔館の人たちですか?」
「いいや」
「ちなみにバーンさんなら博麗神社ですよ」

つい、と彼女を見る。今、彼女はバーンの事を言ったが彼とは知り合いなのだろうか。バーンはガゼルより交友範囲が広い。知らない間にまた増えたようだ。

「無駄がなくなって助かるな」
「いーえ。彼も今日はおやすみらしいですし。今夜はやっぱりあれですか? しっぽりと?」
「何だそれは」
「ご想像にお任せします」



「あら嫌だ、天狗連れてくるなんて」
「ひどい言い草ですね霊夢さん」
「しかしまた変な奴に出会っちまったなあガゼル」
「そうか?」
「悪く言えばパパラッチだぜ」
「パパラッチ?」
「新聞記者です」

霊夢と魔理沙とバーンという並びで三人は縁側に腰掛けてお茶を楽しんでいたらしい。ガゼルも茶を入れてもらい、そのまま啜った。以前猫舌だったのが幻想郷に来て変わったので、熱い物でも出してもらえばすぐ飲める。茶は少し薄い。縁側三人を見るが、顔色一つ変えずに飲んでいた。薄くないかと聞いたら巫女は怒るだろう。黙って啜る。

「てかガゼルを取材なんて、あれだろ。俺から聞けなかった話を聞きだすんだ?」
「気になりますよ、外来人は。山でも一時話題になりましたからね」
「有名人だな、お前ら」
「まあな」

文は手帖と万年筆を構え、目を一層鋭くさせる。彼女は天狗らしいので、その瞳は鴉のように見えた。

「で、外の世界では何をしていたんですか!」
「サッカー」
「ああ里で流行りましたね。他には?」
「サッカー三昧」
「そうですかあ」

何とも残念そうな顔をして、文は手帖に書き取る。

「古道具屋の仕事はいかがですか」
「まあまあ。霖之助さんも優しいし。彼を尊敬しているよ」
「はいはい。じゃあずばりお聞きします。バーンさんとはいつからのお付き合いで」

飲んでいた茶を噴く。幸いにも誰にもかからないで済んだが、気管に入ってしまい咳が止まらなくなる。

「うわきた。ガゼル答えるなよ」
「えふっ、げっ……ぇ、言わない」
「そこを何とか!」
「言わない」

背中をさすって貰いつつ答えれば、文は唸りつつペンを走らす。

「仕方ないですねー。では彼の何処がお好きなんですか」
「なっ!」
「おー熱いねえ」
「やめろ魔理沙、恥ずかしい」
「言わない!」
「むう、口が堅い。夜の方の頻度は……」
「わーわー!」
「いつから文々丸新聞はピンクチラシになったのかしら」
「そんな下劣なものじゃありませんよ。私は仲睦まじいお二人をですね……」
「違うだろ」
「ぎくぅ!」
「ネタがなくて困ってます」
「ぎくぎくぅ!」
「ガゼル、こっちこい」
「いいか文は信用するな。変な事書き立てられるぞ」
「あ、酷いです魔理沙さん!」
「まあガゼルは口が堅い方よね。ほらお煎餅あげるわ」
「これで三対一だな」
「ううーかくなる上は! 私の新聞記者魂で何が何でも証拠を掴んでやります!」
「何それ!」
「幻想郷最高最速を舐めたら痛い目見ますよ! 覚えてろぉおお!」
「変なのに目つけられたわねえ」
「まあ仕方ないよな。ガゼルは今日休み?」
「ああ、暇だからと」
「って事は夜はしっぽりですな」
「やめなさい魔理沙」





最速最高シャッターガール1








ネタ的文ちゃん。前から書いていたのですが、昨日文ちゃんのノーマル全スペカ取得したのでその記念もかねて。ダブルスポイラー欲しいな。でもまだ文花帖買ってない。
続きはまた弾幕ごっこするよ!

うぇwwタイトル…間違えてたww
タイトル元ネタはCOOL&CRATEの「スーパーシャッターガール」より。

2010.04.14 初出
2010.04.25 タイトル改変

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