※攻の受描写あり。




「ねえ、南沢くん」

 はたりと、南沢くんは我に返って目を瞬かせた。
 先程と同じような微笑みを返し、彼は僕の服を握る。

「……帰ろうぜ」
「……そうだね」

 持っていたピアスを元に戻して、家への帰路を再び歩み始める。
 南沢くんは何処か後ろ髪引かれるように、僕と一緒に歩んでいった。
 カーテンの外はぎらぎらと、人工的な光たちが輝いている。
 星のようなそれは、真っ暗な部屋の中では目が痛くなる程眩しい。
 南沢くんはお腹がいっぱいだと、ベッドに倒れている真っ最中。
 腹をさすりながら、シーツに頬を擦りつけている。

「牛になっちゃうよ」
「何それ」
「え、知らないの? 食べてすぐに横になると、牛になっちゃうんだよ」

 ベッドに腰掛け、彼の髪をかき上げる。
 風呂に入った後だから、髪についていたワックスはすっかり落ちている。
 髪がさらさらと指に流れ落ちる。

「ん、くすぐったい」
「ごめん」
「嫌じゃないから、もっと触って」

 どきり。
 僕は頭に指を差し込む。
 髪に顔を埋めれば、香るのは大好きなレモンの香り。
 これだけで胸がいっぱいになる。

「……して」
「食べてすぐだよ?」
「ゆっくりすれば、いいじゃん」

 首に腕を回される。
 ぐっと力をこめられ、引き寄せられた。
 南沢くんは恍惚とした瞳で、僕の首筋にキスを落とす。

「くすぐったい」
「お返し」

 じゅっと首筋に噛みつかれ、吸われる。
 ちょっとした痛みと快感に、背筋がぞくぞくした。
 僕も負けじと、南沢くんの鎖骨を舐め上げる。

「あっ」
「此処好き?」
「ん、すき……」

 ぽこっとした2つの山を舌で行き来させながら、僕は服の中に手を入れる。
 指先には、もうぷっくりとした乳首が引っかかった。

「鎖骨だけで?」
「うるさい」
「鎖骨だけじゃなくて、此処も好きだもんね」

 乳首を引っかき、くりくりと弄ってみる。
 弾力を持ったそこが、段々と湿り気を帯びてきた。
 乳首を弄る度に、身体の下で彼の膝が忙しなく合わせられる。

「乳首だけでいけそう?」
「ひっ、う……」

 ぺろりと服を捲り上げ、鎖骨から乳首へ舌を移動させる。
 乳首が舌に触れた瞬間、ぴくんと身体が跳ね、そして口に押し付けれられていく。
 ちゅっちゅっ、と音を立てながら吸い付けば、気持ち良さそうに声が上げられた。

「はぁっ、や、やぁ」
「ねえ、僕ね、ずっとしたかった事があるんだ」
「え……?」

 僕はジーパンと下着を脱ぎ、南沢くんの乳首へと亀頭を乗せる。
 ぼんやりとしながらそれを見る彼は、おもむろに亀頭をくにくにと弄り始める。
「ん、や、そうじゃなくて……」
 乳首に亀頭を擦りつける。
 尿道に、乳首が擦れて気持ち良い。
 乳首ズリなんて予想もつかなかっただろう、南沢くんは乳首を責める性器を見つめながら熱い吐息を零していた。
 右ばかりやりすぎたから、次は左にちんこを動かし、そしてまた腰を振る。
 ぬっとりと先走りで汚れた右の乳首に、彼は指先を伸ばして挟み込む。

「あっ、ぬるぬるして……、んっ」

 自らの指で捏ね繰り回されるそれを見て、腰からぶるぶると射精前のあの感覚がやってきた。
 僕は呻きながら、彼の左の乳首へと精液をぶっかける。

「……俺のオナニー見て、いっちゃった?」
「……お恥ずかしながら」

 ぶっかけられた精液を塗り広げ、南沢くんは笑った。
 手についたそれを舐め、そして僕のちんこを反対の手で扱く。
 びくびくと脈打つそれを、面白そうに擦るのだ。伸びた爪で尿道を抉られる度、悲鳴が出てきてしまう。

「へんたい」
「君も、だろ?」

 素早く彼のズボンに手を入れると、そこはもうぐっしょりと濡れていた。
 こんなにして、と呟くと、ぱくりと僕のちんこを銜えられてしまう。

「って、あっ!」
「ん、ぅ……」
「ちょっと、南沢くん!」

 うわっ、うわっ、嘘だ……。
 ずっと大切に守ってきた唇が、あっさりと奪われてしまった。
 ファーストキス喪失。
 何故かフェラもキスに判定されるから、ずっとずっと守ってきたのに。
 穢れを知らなかったその唇。
 ああ、と僕は絶望しながらも、彼の唇から与えられる快楽を享受してしまう。

「んっ、んっんっ、ちゅ、ぅん」
「南沢くん……」

 彼の清らかだった唇が、僕の汚いちんこで犯された。
 それを考えると、ぞくぞくと来る何かがある。
 嘘、もう出そう。

「南沢くん」

 彼のズボンの中に潜り込ませていた手を、尻に移動させる。
 ひくひくするアナルに、指を滑り込ませ、ぐちゃぐちゃと動かす。
 するとどうだろう、一気に南沢くんの鼻息は荒くなり、フェラは舌先で舐めるだけの大人しいものへと変わってしまった。

「アナル、そんなに気持ち良いんだ?」
「ぁう……、う、んっ」

 眉を下げ、犬のように息を吐く。
 何とか僕に気持ち良くなってくれるようにと、亀頭にちゅうちゅう必死で吸い付いてきた。
 あっ、それやば。

「うあっ」

 南沢くんの前髪に白いネバネバがぶっかかる。
 折角風呂入ったのに、悪い事しちゃったな。
 僕はアナルに入れていた指を使い、穴を左右に引っ張る。
 くぱ、と開かされたアナルは空気に触れるとひくひくと蠢く。

「はっ、ぁ、あっ」
「柔らかくなっちゃって」

 顔を真っ赤にしながら、胸に縋りつかれる。
 背中に腕を回され、南沢くんが僕を掻き抱く。

「ぁ、ぁあ、いれっ、あっ、ほし……い」
「うん?」

 ぐっと身体を引き寄せられ、僕の耳にぷにっとした唇が当たる。
 はぁはぁという吐息が耳を犯して、思わずぞくぞくした。

「あ、ほしい、ほしい、いれて、早く」
「南沢くん」
「ひぅっ! いかせないで、やだ、あんたの、あんたのが」

 僕はアナルをぐちゃぐちゃと弄る。
 膝も使ってペニスを擦ると、やだという声が増える。

「いきたくない、やだ、いや、ほしい、ゃあ……っ!」

 びゅっと、ジーンズに白い染み。
 涙を瞳に溜め、南沢くんは達した。
 僕の背中を抱く腕が、ずるずると落ちていく。

「なん、で……」

 僕を見上げる瞳は、切なげで熱に浮かれていて、何故だろうか哀しみを訴えていた。

「好きじゃない奴に、処女奪われたくないでしょ」

 僕はそう涙を拭ってやりながら、そう言い聞かせる。
 南沢くんは首を振る。
 目を大きく開いて、違うそうじゃないと呟く。

「俺は、あんたが」

 カチリ。
 日付変更。







「ぅあ、あっ、ひっ」

 下から突き上げてくるそれが、とても気持ち良い。
 手を絡められながら、ベッドに押し付けられた僕はただただその快楽を受け止める。
 鎖骨だって、乳首だって、舐められたらすぐにいっちゃいそうな位。

「あっ、だめ、だめっ! あっ、んぅ」
「駄目なものか」

 そう耳たぶを嬲ってくる舌。
 責め上げてくる彼の腰に、僕は足を回す。
 ぎゅっと密着する幸福感。
 だって、僕はこいつが、……?
 本当に、僕はこいつを愛していたのか……?

「あっ、やだっ! やだっ、はなして、はなせ!」
「てめ、また」

 こいつが僕を、何で?
 そう、こいつは僕を好きで、僕は彼を好きで……。
 ああ、そうだ。僕は賭けに負けたんだ。
 期間内に、彼を買えるだけの金を集めて、彼を買って、そして僕と彼(だれ?)が相愛になれるか。
 31日間の、長いけど短い夢。
 結局、彼は僕を好きになってくれなかった。
 ……そうだったか?
 こいつは言った。あと一歩だったって。
 何が一歩だったんだ? 何を……。

「ふぁっ、だめっだめ! やめろ、っひ」
「すぐに暗示解けちまうな。でも、これくらい感度良くなったら、後は犯しまくれば良いよな?」

 な? 調教していたお前なら分かるだろ?
 そう問いかけられ、僕は背筋を這い上がる快楽に思わず頷いてしまった。
 だって気持ち良い。彼も早くこうして欲しかったんだね。これに気付けなかったのがいけなかったのかな?

「いいっ、いいよ……、きもちい」
「良い子だ。お前が気付かなくて良かったよ、本当に」
「きもちい、こんな、きもちい……こわれるっ」

 がくがくと身体が痙攣してしまう。
 ぎゅっと抱きついて、こいつにキスをする。嬉しそうに笑われて胸がいっぱいになった。
 ふと、自分の指が光っているのに気付く。
 視界の端に映りこんだのは、僕の指に嵌められた赤い石の指輪。

(ああ、これが足りなかったんだ)
 
 でももう遅い。
 僕はもうこいつの物だ。
 びくびくっと、身体の中を電流を駆け抜ける。
 こいつにしがみついて、僕は射精した。
 後を追って、こいつも僕に中出ししてくれる。
 最後の一滴まで、僕の奥に子種を注いでくれる。
 幸せだった。







バッドエンドver
2年もお待たせしてしまって申し訳ありません。

14/05/07 初出

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