※11/10/11で倉南倉の日!



 南沢さんは綺麗だ。外見だけは。
 口開けば毒ばっかり吐くし、鼻にかけたような性格だし。
 最初はやっぱり、カッコイイ人だなと思ったんだよ。本人の前では絶対言わないけどさ。
 蓋を開けりゃ、ただの内申厨だし自意識過剰だし、人の事チビって馬鹿にするし。
 あーむかつく。
 「お似合い」とか、浜野、お前は黙れ。



「今日はなあに」

 じわじわとコンクリートが日光を反射して暑い中、南沢さんは日陰で横になっていた。俺にパシらせといて、良いご身分ですね先輩は。
 それでも整えられた前髪が、汗で額に張り付いていた。
 きらきらして綺麗だな、といかれた感情を振り払い、俺はビニール袋から戦利品であるパンと紙パックを手渡す。
 それを受け取って、南沢さんは気付かれない程度に眉をひくつかせた。

「チョココロネといちご牛乳……」
「甘いの好きでしょ、あんた」
「バカ。お前の焼きそばパンと交換しろ」
「やです」

 俺はさっと手をかわして、焼きそばパンにかぶりつく。
 南沢さんは目を細めながら、それを見つめるだけで追撃はしてこなかった。

「あれ、眠いんですか」
「ん……」

 だから動きが鈍いのか。
 俺は牛乳パックにストローを挿し、水分を取る。ああ美味い。

「ん……」

 小さな声を出して、南沢さんがコロネに噛み付いた。
 かじった際に溢れてきたチョコが唇の端につく。
 眠いから一口が小さいな。

「南沢さーん、垂れますって」
「垂れたらお前舐めてくれる?」
「バカですか」

 ああ言わんこっちゃない。
 もう落ちる、といった所で、南沢さんの指がチョコを受け止める。
 白い指とチョコのコントラスト。南沢さんの指、クッキーみたいだな。

「ほら」

 そう言って差し出してきた指。

「舐めろよ」
「ほんとにするとは」
「早く」

 落ちちゃうだろ、と気だるげになりながら、南沢さんは俺の唇に指を押し付けた。
 もったり重いチョコの感じ。眠そうなうっとりとした瞳の南沢さん(なんか似てる)。
 その目を見つめながら、俺は指を口腔へ導いた。

「おいしい?」

 舌足らずな声音。それがとてもえろい。
 爪の間まで入ったチョコを舐め、南沢さんの指をしゃぶりつくす。
 少ししょっぱい、南沢さんの味がした。

「いいこ」

 そう優しく囁いた南沢さんは、俺の口から指を引き抜き、唾液まみれの自身のそれを舐めた。
 じわりと身体が熱くなる。

「倉間の味がする」

 きすのときとおなじ。
 そう続けられて、俺は思わず立ち上がった。
 焼きそばパンと牛乳パックを引き連れ、足早に屋上をあとにする。
 暑くて食べられたもんじゃない。
 34℃の日にバカじゃないの。
 いやほんとにバカじゃないの、バカじゃないの。
 俺は一段飛ばしに階段を駆け下りる。
 鼓動はそうやって走るせいだと誤魔化しながら。







南倉書こうと思ったら、あれー?イケメンな南沢さんどこー?
倉南倉でも、いいですか?

11/10/11 初出

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