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08/19

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そっとしておいてほしいときにはかまわれて、隣にいてほしいときに誰もいなくて。好きな人には好かれなくて、苦手な人に親しげにされて。何度もボタンをかけ違ってしまうのはどうしてかな。それは上からはめるのにこだわりすぎているから。下からはめれば間違えないよと教えてくれたのは誰だったかな。


ままならないことも、やり方次第で結果が変わるかも。
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08/18

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胸の痛みを感じなくなったのはいつからだろう。薄荷を流したかのように広がるひんやりとした痛み。ほんのりと甘く切なく、子どもに返って泣きじゃくりたくなる、快い痛み。自分自身を刃物で切り裂く倒錯的な痛み。失うものがあるならば痛みはもっと大きくなる。ずっと浸っていたかった、陶酔感。


『娼婦』と『聖人』のお話は小休止。
これからしばらく即興劇をお楽しみください。

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08/17

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「頭を撫でてください」「恥ずかしくて無理です」「ふとももを撫でるのは平気なのに?」「それは変態行為として割り切れるからいいんです」「撫でてくれたら私のセクシー写真をあげます」「撫でたら生き地獄が待っているんすか……」「遠慮なくソロプレイをなさい。私の前で」「さらなる生き地獄だ」


ソロプレイだなんて、上手いことを言ったものです。

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08/16

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あなたと違って私は意地悪。あなたに恋する子がいても私は平気で誘惑するわ。たとえその子が友達でもね。私に恋する人がいたら気づかないふりしてからかうわ。わざとその人の前であなたのことを褒めちぎるの。仲の良さを見せつけられたらもっといい。さあ、もっと踊ってみせて可愛い人たち。


恋が叶うのも叶わないのも私次第。なんて愉快なのでしょう。

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08/15

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陽光の下では知らんぷり。月光の下では言葉あそび。たとえ身体を重ねてもけっして情を抱いてはいけません。あの子との約束だから。幸せな夢を壊さないために、秘める心。病める心。心配しないで、欲しくて欲しくてたまらないのは今のうち。いつかは冷める。すぐに飽きる。甘いものはみんなそう。


私があなたに恋をしないかぎり、あなたは私のそばにいてくれる。

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08/14

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たまに言ってくれるよね。「先生は僕の奴隷なんだから犯されて当たり前」ぞくぞくする。いつになったら首を絞めてくれるの、聖人様。私を天国へ導いてくれるの。儀式の準備ならいつでもできておりますわ。あなたの前で跪きます。どうか髪の毛を掴んでください。そのために長く伸ばしているのです。


真心こめてご奉仕しますわ。

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08/13

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「嘘がバレないタイプでしょ」とんでもない。私があなたを騙すなんてありえない。これまでもこれからも。演技をするだけ。物語を語るだけ。あるいは沈黙を守るだけ。真実を隠したがるのはあなたのほう。人形になりきって。いっそのこと蝋で固めてあげようか。そしたらきっと私はあなたを忘れられる。


手に入れたらもう興味を失う。
だからお願い、ずっと私を拒み続けて。

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08/12

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好きな果物は苺。好きな苺の品種は?これも訊かなきゃ。とても大切なことだから。聖人様のためにジャムを作るの。ありふれた素朴な瓶に詰めて。青いリボンを結んで。こう言って渡すの。「このジャムを塗ったらもっと美味しくなるかなって」きっと喜んでくれる。ほんとうの贈り物が何かを察して。



可愛くて、可愛くて、食べちゃいたい。

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08/11

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石の寝台に腰かけて彼のおとないを待つ。掌中に小さなオルゴールを包み込んで。ふいにうさぎがくるくると踊り音楽が流れる。「ねぇ、ぎゅってして」「なんすか、急に」背後に現れた気配に声をかけると即座に返事が届いた。たったそれだけで胸に灯がともる。オルゴールが鳴り続ける間、彼は私のもの。


詩ではない。散文だけれど小説でもないよなー、これ。

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08/10

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「誰かを嫌うなんて面倒くさい」その物言いがいかにも彼らしくて笑いを堪えるのに必死。「さすがは聖人様。慈悲深い心をお持ちですこと」「崇めなさい」褒めてなんかいないのに。「誰も嫌わない代わりに誰も好きにはならないのでしょう」「そんなことないっすよ」本当かしら。私に恋もできないくせに。


140文字小説(?)第2弾。引き続き娼婦視点です。
お姉ちゃん的存在の『娼婦』と弟キャラの『聖人』とのかけ合い。

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