5−1
Side: lightning


「離せ!だから、私は平気だ。」

「医者としていくらなんでも見逃せません。どうか点滴程度でいいのでお受けください。」

「だから私は…」

さっきからこの調子だ。ちょっと具合が悪くて座り込んだ位でこの騒ぎだ。

「大人しくしろよ。ファロン。お前はガキか?」

「私は元気だ。そのような処置を受ける必要はない」

「とか言っておきながら、青い顔してぶっ倒れたのは何処のどいつだ」

「それは…」

「栄養失調と睡眠不足ですね。少佐最近食事も睡眠も取っておられないのではないですか?

このままだと悪化します。1時間もあれば終わるので点滴を…」

「しなければ俺が今妹に電話するぞ。」

「…分かった。」

仕方なく意味の無さげな点滴の管を通して
医者は外に出て行った。


「なぁ、お前やっぱり医者の言うとおり寝ても食べても無いんじゃないか?」

「……」

寝る気にも食事をとる気にもならなければ無理にする必要もない。

「図星だな。短期間の間にお前痩せたぞ?」

「平気だ…」

「平気じゃないだろって!お前につぶれられると困るんだよ。

原因はやっぱりホープの事だろ…?」

私は原因を指摘され言葉を失う

「あれは俺のせいでもあった。セキュリティをもっと完璧にして早く気付ければ…」

「お前は悪くいだろう。それにお前が来てくれなければもっと悲惨な事になっていた。

それに…悪いのは私だ」

自分の不注意で招いたことなのだ

「…バカ言え。悪いのはレイだ。それと…ホープ。」

「ホープは何も悪い事してはいない。私が信用されていなかった。ただそれだけだ」

「お前に聞いても詳しい事は教えてくれないけどよ、俺から見たら十分ひでぇよ。」

「…それも私が招いた結果だ。」

「自分責めるなよ。なんでお前はホープをかばうんだ?

ホープは傷ついたお前のにそばに居て傷を癒す存在だろ?

それなのに傷ついたら捨てるなんて、あいつがお前の傷を深くえぐる事してるじゃねえか」

リグディが容赦なく言い放つ

「やめてくれ、あいつは何も知らないんだ。」

私がそう言うとリグディがやっぱり…というようにため息をついた

「やっぱりな。隠してるんだろ」
その言葉に首を振る

「隠していない。話そうとしたさ。でも」

「話を聞いてくれなかったか。」

悲しいけれどリグディの言うとおりだ。

私は少しうつむいた。

「無理にでも話を聞かせて戻ってきてもらえばいいじゃねえか!」

「…もう取り返しがつかない。声も聞くことすら拒否されている。

それほどまでに軽蔑されたんだ。

私がどうあがこうと許してはもらえない。

変な動きをしてこれ以上嫌われるよりはいいさ。

でも、これで良かったんだ。

私みたいな女を相手にしなくてもあいつならすぐにいい人が現れる。

だから私なんか最初から居ないほうが良かった。」

「まずお前が謝るような事なんて1つもしてないじゃねえかよ!

許すとか許さないとかそう言う問題じゃないだろう!?

襲われて傷つけられて、その事で大切な人失って、なんでお前はそんなに強いんだよ!

なんでそうやって自分を犠牲にしてまで他人の幸せを考えられるんだよ!

倒れるまで苦しんでるのに…

そんな事してたらお前が幸せになれねーぞ」

「幸せなど、私には幸せを望む資格など最初から無かった。」

「そんな事言うなよ!」

大切な人はみんな居なくなるんだ。

両親、セラ、ヴァニラやファング、ホープも。

みんな私の前から居なくなる。

「…この先幸せなんて望んでも惨めなだけだ!…っ」

どうしてリグディと言い争わなければいけないのだと思う。

「お前おかしいぞ!次そんな事言ったら精神科医呼ぶぞ?

体を壊すまで思いつめるんじゃねえよ。

分かったな?悪いけど俺はちょっと下で人待たせてるから行くわ。

点滴引っこ抜いて逃げるんじゃねえぞ」

「ああ。」

リグディが病室から出て行って私は沈みかけた夕日を眺めた。

リグディの言っている事は最もな考えだと思う。

それでも私はそれに従う事ができない。

リグディの言っている事も分かる。

でももう手遅れなんだ…

「っ…すまない…ホープ…」

何度目かも分からない涙が頬を流れた。



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