『蒼青』天也の女体化2


光沢のある渋い茶色の四角い座卓を挟み、2人は向かい合って食事を取っていた。
一人は銀の髪を肩口で緩く結び、白い着物を着た中性的な容姿を持つ天華。
もう一人は黒髪を短くざんばらに切り、その細身の身体を黒い学ランに包んだ天也だ。
天也は無言で用意された朝食を口に運びつつ、魚を食べつつ御猪口で避けを口にする天華に鋭い視線をやる。
その視線に気付いた天華は天也を見るとにやりと人が悪そうな笑むを向けた。
「随分可愛い姿になったねぇ。かっはっはっ」
この言葉に女の姿となったのは、この母親が原因だと察し、嫌そうに眉を顰めた。
「元に戻してよ」
「何のことだい?」
そう聞き返しつつも人の悪そうな笑みを浮かべる母を天也はジロリと睨んだ。
「とぼけるのもいい加減にしてよ。こんな姿じゃ響華に会いに行けないじゃない」
「別に今日くらい会いに行かなくても、響華は死にゃあしないよ」
「虫が増長する」
天也の言葉に天華は呆れ顔になる。
「天也、あんた本当に父さん似だねぇ。過保護過ぎやしないかい?」
深く溜息をつく天華に天也は「どうとでも」と返すと思案顔になった。
響華には頼り甲斐のある兄として見て貰いたい。
女の姿で響華の前に姿を現す事は、自分のプライドが許さない。
だが、母は元に戻してはくれない。
こうしている間にも、虫が響華を襲っているかもしれないのに。
天也の握っていた箸が、バキリと折れる。
天也はそれを無造作に放ると、スクッと立ちあがった。

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