あなたの隣で | ナノ

限界のない愛



思ったよりも高い買い物をしてしまった。
っていうか、元々はウィンドーショッピングをするはずだったんだわ、私……。



いくらひと目惚れだとはいえ、高い買い物をしてしまった。アランが気に入ってくれなかったらどうしよう…。

自宅に帰りながら、そんなことばかり考えていた。





家に戻ると、当然ながらアランはいない。

私は買ってきた例の下着をチェストにしまおうとして、そして……ふと、手を止めた。



『後ろの部分、ちゃんと確認しなかったかも…』



そう、試着した時、後ろの部分をよく見ていなかったのだ。シルエットとか大丈夫だったかな?このランジェリー、普通に下着としても着る事ができるって店員さんが言っていたからな。
いわゆるナイトランジェリーだけではないって。


うーん…どうしよう。もう一回試着してみようか?今丁度アランもいないし。
私は試着することにした。もしシルエットが変だったら、返品しなくちゃ。




これはいわゆるベビードールっていう商品みたい。店員さんが言っていたっけ。


「恋人を甘く誘惑するランジェリーですのよ。フフ……あなたの恋人を、ノックアウトできるかしらね?」


「う……ど、どーでしょーか…」


どっちかっていうと着ている中身に問題があるような気がするのですが。


そんなことを言う事はできないので、下を向いて黙っていた私だった。




バスルームで着替えてみる。
高い商品だけあって、着心地は抜群だった。レースも高級だからか、全然痒くないし。
後ろを向いて、背中を見てみる。大丈夫みたい。しわが寄ったり、変になってはいないようだった。


『良かった…。大丈夫みたい』

とホッとしていたら、私の耳は信じられない音を聞き分けた。
あれって…扉が開く音じゃ?
ドキッとする私。すると、聞きなれた低い声が……。


「アイネ……『タダイマ』」




!ア、アラン?!


ど、どーして?今日は帰ってこられないって話だったのに。
私はあたふたとしてしまう。早く…着替えないと!

って…服、違う部屋に置いて来たんだった〜!!


ままま、まずいかも…っ!

アランの声が聞こえてくる。

「アイネ…いないのかい?」

私は仕方なく慌てて返事をする。

「います!いるんだけど……ちょっと待って!」

すると足音が聞こえて、バスルームの扉の外に気配を感じた。

「アイネ、どうしたんだい?お風呂上りなのかい…?」


!そう、その手があったわ!私はホッとしながら言った。


「そうなの、これから入るところなの。だからちょっと待ってて―――」

「じゃあ私も一緒に入ろう……アイネ、良いだろう?」


良くない!ちっとも良くないって!


「今は駄目!」

「どうして?今更恥ずかしがることもないだろう?アイネ……愛してるんだ。早く君を感じたい……」

扉越しに聞こえる、アランのセクシーな声に私の胸は妖しくときめいてしまう。


そんな声を出されたら、私、我慢できないじゃない……。


私は深呼吸をすると、囁くように言った。アラン、あなたならこの台詞、分かってくれるかしら?





「〈それがもし本当の愛だとしたら、どれくらい愛してくれるの?ねぇ、教えて……〉」


するとしばらくの沈黙の後、アランが静かに笑う声が聞こえてきた。そうしてその後、とってもセクシーな声が聞こえてくる。

「〈どれくらいか言えるような愛は、卑しいものだ〉」

……アラン、わかってくれた…。
私はときめく胸を、荒くなる息を抑え付けながら、そっと囁く。

「〈どこまで愛されているか、限界を知りたいの…〉」

アランの低く、甘い声が私の鼓膜を刺激する。

「〈それでは…新しい天と地を見つけなければ〉」

そう言うと、アランは扉を開けてきた。




アランの前に、ついに私は晒されてしまう。
彼の瞳が見開かれ、そして…ああそして彼の目が情熱の炎に煌いたのが分かった。


「私の“クレオパトラ”は、随分とセクシーな格好をしているようだけど、いつも私がいない時にこんな刺激的な格好をしているのかい?誰かを、誘惑しているのか?」

アランが妖しく笑いながら、そおっと、私のボディラインをなぞってくる。
私は甘い吐息を付きながら、アランから目を逸らす。

「ばか……そんな訳ないでしょ…私の“アントニー”は一人だけよ…」

「アイネ……」

「アラン……そんな瞳で、私を見つめないで……」

「どんな瞳?」

「私、あなたの視線に焼かれてしまいそう………」

「君がいけない。私をこんなにも…煽るから…」


アランはそう囁くと、私を抱きしめてきた。そうしてキスを待っている私に、アランは妖艶に笑いかける。

「夜はまだこれからだ…アイネ…。これから二人で、新しい天と地を見つけに行こう」

「アラン……あなたとなら、何処へでも……」


そうして私達はキスをしたのだった―――。





アランが私をベッドから解放してくれるのは翌日になってからだった。

アランはいやらしく笑いながら私に囁いてきた。


「今度は、もっとセクシーなランジェリーで…」




やだ、癖になりそう……。




※〈 〉内の台詞は、シェイクスピア作“アントニーとクレオパトラ”の台詞を引用しています。


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