同棲は私達の関係をもっと熱くさせた。
アイネの知らなかった一面を知ることができたから。
全てが新鮮で、毎日が楽しい。
ただ、一緒に食事を作るだけでも…。
アイネ、君が作る料理はとても美味しいんだね。それはきっと、料理を通して、私に愛情をたっぷりと込めてくれているからだと、うぬぼれてもいいのだろうか?
軽く鼻歌を歌いながら料理を作る君。うなじへこぼれ落ちている髪の毛が、私を酷く煽る。
私の食欲には限りがないらしい。特にアイネ、君に関しては。
寒い夜は、一緒にぴったりと寄り添って映画を観たね。
熱いココアにマシュマロを落として、甘い、甘いココアよりももっと甘い私達は、いつしか映画そっちのけで愛し合ってしまって……結局何の映画を見ていたか、解らなかったけれど。
私の仕事は俳優だから、君に迷惑をかけることが一番心配だった。
私の職業は、華やかな反面、危険もある。
詐欺まがいのこともある業界だ。私の知り合いだと言って、君に近づいてくる悪い奴もいるだろう。
だから君を守るためにも、しっかりとこの異常ともいえる映画業界について知ってもらわなくては。
私はアイネに言った。私が紹介する人以外の業界人とは、係わりあいにならないで欲しいと。
私は君を守りたい。私が君を好きになったせいで、君を不幸には絶対にしたくないんだ。
同棲をしたことはとても良かったと思う。お互いを知ることができたし、何よりもアイネが安全だ。
そう、そうなのだが……最近、私の仕事が忙しく、離れ離れになることが多くなってきた。
仕方ないことだ。この映画の仕事は、前々から決まっていたことだからね。今更断るわけにはいかない。
なんといっても、契約書にサインをしたという事は、違反したら莫大な賠償を負わされるはめになるし、何よりも待っていてくれるファンに申し訳ないから。
アイネにもね。
撮影に行きたくない、と思わず彼女に駄々をこねてみたら、こう言われてしまったのだった。
「アラン…それって失礼よ?あなたを待っているファンが沢山いるのに…私だってそうなのよ?
私、今のあなたを勿論愛してるけど、アクターのアランも大好きだもの。とっても尊敬してるし。
だから行って来て?お仕事、頑張ってね!ただね……約束して欲しい事があるの」
「わかったよ……仕事に行こう。君にそう言われちゃ、私としてはどうしようもないからね。約束して欲しいこと?それは一体どんなことかな?」
不思議そうな私に、アイネはそっと囁いてきた。
「毎日電話を頂戴。離れていても、あなたの声が聞こえたら……きっと寂しくないと思えるから…」
「アイネ……どうして君はそうやって私を煽るんだ…」
「???煽るって…どこが?どの辺が?」
まるで解っていない彼女はキョトンとしている。そんな君もとても可愛らしい。食べてしまいたいくらいに。
いや、食べてしまおう。だってこんなに美味しそうなんだ。私の食欲をこんなにもそそらせる君にも責任がある、そう思わないか?
だから私はニヤリと笑うと、そっと囁いた。
「知りたいなら教えてあげよう…。おいで、アイネ……」
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