短編 | ナノ


▼ 嫌い嫌いも好きのうち?!




世の中には、常識の通用しない人がいる。


どうやったらそのような考えた方ができるのか?何で、どうしてそのような行動をとるのか?それはいくら考えても不明。今までの考え方、解釈を根底から覆す、信じられないような行動や言動をする奴がいるのだ。

まさか、そのような人が現実にいるとは。まるで、人の形をした別の生き物のようだ。
その言い方はいくらなんでもひどいんじゃないかと言う人がいるかもしれない。
じゃあ、実際に体験してみろっつーの。
文化の違いとか人種の違いとか、そういうんじゃない。そういうんじゃないのだ。この、ギルテロイ・ロックハートという男は。



何の罰ゲームかってくらいあり得ない、あの、ロックハートの迫られ事件からしばらく経った頃。私は忍者のようにそれこそ奴の声がちょっとでも聞こえようもんなら隠れる、逃げる作戦を展開していた。ハリーも何故か奴を避けていたけど。二人していっつも同じように逃げていた。そしてそれは今の所効果があったのだ。あれから奴に迫られてはいない。まあ、“校長に言う”って言ったのが効果あったのかも知れないけど。

この学校なんて生徒は沢山いるし、可愛い女の子もいる。ロックハートは一応人当たりは良いから、一部の女子生徒には人気があった。ファンレターなんて一杯貰ってるし、いつも可愛い女生徒に囲まれていた。ハーマイオニーなんてうっとりとした顔で奴を見つめている。趣味、悪すぎやしませんか。秀才が陥りやすいタイプだよな。私だって人の事は言えないかもしれないけど。

ハーマイオニーみたいな可愛い子達が夢中なのだ。だから、いつかは私の事をあきらめてくれるんじゃないかと思っていたのだ。だって私男の子だよ?いくらアジアンビューティーな顔になったとはいえ、同性なのだ。きっと一時の気の迷い。そのうち飽きるだろうと思っていたのだ。


その考えはとっても甘かったということを、あとで嫌っていうほど思い知ることになるんだけど…。


最近ロックハートの奴は、女の子達に囲まれていることが多いので、私を見かけても声をかけようとはしなくなってきていた。そういうこともあったのだろう、油断していた。私の気の迷いもあった。それは認めよう。

だけど、何故、どうしてこんな目に私が遭わなきゃならないの!

私は今、奴に追いかけられている。
奴の授業を何とか受け、ハリー達とさっさと教室を後にしようとした時、ラベンダーに呼び止められたのだ。

「ねえ、レイ、ちょっとお話があるの。いいかしら?」

ラベンダーが教科書を抱えながらおずおずと私に話しかけてきた。珍しいな、君から話しかけてくるなんて。私は驚いたけれど断るのも失礼かと思ったので、

「いいよ?お話って何?」

そう言うとラベンダーは急にモジモジしだしだ。

「お話というのはね…あのね……」

なかなか話の本題にならない。ハリーや皆は気を利かせて、

「先に大広間へ行ってるね」

と言うと教室を出て行ってしまった。えええ、寂しいんですけど。今、教室に残っているのはラベンダーと私だけだ。

「あ、あの、ラベンダー?もうすぐ昼食だしさ、手短に頼むよ…」

一応気を使いながら話してみる。ラベンダーは下を向きながらモジモジを繰り返していたが、急に私の後ろの方を見て、

「あっ……レイ、本当にごめんなさい!」

そう叫ぶと去っていった。残るのは私のみ。
………なーんじゃありゃあ。話って何だったの。そんで何で謝られたのか不明。

「…何だったんだ、一体」

そうつぶやいた時だった。

「あの娘は私のために引き止めておいてくれたんですよ!ああ、やっとレイ、貴方と愛を語らう時間がやってくるとは、夢のようです!!」

はあ?後ろを振り返ると………そこにはロックハートが!!
これって、認めたくないけど、罠に嵌った?こーんな真性のアホの策略に私が嵌ったのか?ううう、間抜けすぎる…。
私の心はショックのあまり遠い宇宙を彷徨ったが、現実逃避をしている場合ではない。これってピンチなのだ。
どうして私は変な奴にばっかり好かれるんだ!勘弁してよ!

「ロックハート教授、だから冗談は止めて下さいと言ったでしょう!僕はそんな冗談に付き合うつもりはありませんから。そろそろ昼食ですし、失礼させてください」

そう言うと教室を出ようとした。…出ようとした。確かに出ようとしたんだけど、ドアが開かない。何なんだよ、お前もクィレルと一緒か!変態同士気が合いますね。
私はしばらくドアをガチャガチャ廻していたが、溜め息をつくとロックハートへ言った。

「ロックハート教授…仮にも教師が生徒を監禁するなんて、一体どういうことですか?これはもう冗談では済まされないですよ?」

私は声に静かな怒りを含ませた。ムカつく。マジムカつく。
ロックハートは、はははは、と笑って、

「冗談ではありませんよ。貴方が私の求愛を避けるのがいけないのです。本当は私の事が好きなのに、そんなに嫌いという態度をとって」

「だから!僕が!いつ!貴方を!好きだと言いました?」

き〜!話がまったくかみあってない。何だこいつ、何なんだ。イライラしてきた。
ロックハートは例の白い歯をこれでもかってくらい見せつけながら微笑むと、

「嫌い嫌いも好きのうちと言うでしょう。そんなつれない態度をとる貴方も、私にはたまりませんよ」

あり得ないことを言ってきた。
こいつの頭はゼリーかなんかで出来てるんだよ、きっとそうなんだよ。もう言うだけ無駄なんだな。私は深―い溜め息をつくと杖を取り出した。おじいちゃんには後で説明しよう。命の危険を感じたといえば、大目に見てくれるだろう。

「僕は貴方にそんな感情を持ったことはありません。これ以上嫌いにさせないでください、ロックハート教授」

そう言うと私は扉に向かい杖を振った。

「レダクト!」

すると物凄い破壊音が当たりに響き扉が粉々になった。ちょっとやりすぎたかな?怒りで呪文が制御できなかったのかも。私は一目散に走り出した。こんな所、一分一秒居たくない。私が走って廊下を出ると信じられないことに奴が追いかけてきた。

「レイ!待ってくださ〜い!」

「待ってくれと言われて、待つ奴がいますか!」

ひぃ〜追いかけてくる!どどど、どうしよう。これじゃあ大広間へ行けないよ。


誰か助けて!!




*****




ハリー達は大広間で先に食事を摂っていた。

「…レイ、来ないね」

ハリーが心配そうに大広間のドアを見ている。ロンがサンドイッチにかぶりつきながら、

「話が長引いてるんだろ?愛の告白だったりして…」

ハーマイオニーはすぐに遮った。

「そんなはずないわ!だって皆で約束したもの…」

ハリーがハテナって顔をして、

「約束って何さ?」

と聞くとハーマイオニーは顔を赤くして、

「何でもないの。女の子の秘密なんだから!」

そう言うと紅茶を飲んだ。ロンは、

「そういえばレイもロックハート教授がくると何処かに逃げるよね。何かあったのか?」

と聞いてきた。ハリーはげっそりしながら、

「詳しくは知らないけど、気に入られているみたいだよ。かわいそうに…」

遠い目をしながらサンドイッチを食べる。ロンが目をまん丸にして、

「ええ!あんな奴に好かれるなんて、レイ、かわいそうに…あれ?あれラベンダーじゃないか?」

大広間のドアからラベンダーが出てきた。レイは居ない。ハリーも同じ光景を見ていた。

「おかしいね?ちょっと聞いてみよう…」

ハリーはそう言うと席を立ち、ラベンダーの元へ向かう。ラベンダーはぼーっとしていた。
「ねえ、ラベンダー?レイは何処?」

するとラベンダーははっとしたような表情をして、

「レイ?さあ、知らないわ…」

と言った。

「だってさっき話があるって言って教室に残ったじゃないか」

とハリーが言うとラベンダーは驚いていた。

「え?私そんなことを言ったの?…実は、授業の途中から記憶が曖昧なの。気が付いたら廊下にいるし…もう何が何だか…」

「おかしいね…。それじゃあレイは何処にいるんだろう…」

二人で話しをしている時だった。突然後ろから静かな声が聞こえて来た。

「Mr,ポッター…Ms,ブラウン…今レイという言葉が聞こえたが…何かあったのかね?」

二人が振り向くと恐ろしく機嫌の悪いスネイプ教授が後ろに…。二人は青ざめた。
ラベンダーが勇気を出して前に出た。これは教授に相談した方が良いと思ったのだ。

「……実は……」




*****




いくら鍛錬で鍛えているからって、体力にも限界がある。
私は逃げて、逃げて、逃げまくってほとほと疲れてしまった。まったく、凄くしつこい奴だ。このままでは昼食を食べ損ねてしまう。だがこの状態で大広間へ行こうものなら……スネイプ教授がいるのだ、血を見るぜ。いやマジで本当に。
この間だって報復へ向かおうとする教授を必死で引き止めたのだ。こんな光景を見たらどんな恐ろしいことになるか。これは自分自身で解決しないとっ!
私は走りながら、何の呪文を唱えようかと考え出した。

「レイ!逃げないでください〜!私の愛を素直に受け取るのです!」

マジでウザイ。
私は走るスピードを速めた。…明日は筋肉痛だろうな。
気が付くと動く階段の所までやってきた。やばいな…ここで勝負しないと追いつかれちゃう。私は階段を素早く登ると、

「いい加減にしてください!校長に本当に言いますよ!」

杖を構えながらぜーぜーしつつ言う。ロックハートは髪が少し乱れていたがその他は変わりなかった。何故だ。

「校長に言うのですか?二人の愛を!おお、是非言ってください!私達の愛に、校長は寛大な赦しをくれるに違いありません!」

はあ?馬鹿じゃないのかこいつ。

「寛大な許しぃ?アンタ、馬鹿じゃないのか!アンタは辞職に追い込まれるって事だよ!」

杖を構える。もお、手加減なんてしない。こいつには実力行使しかないんだ。

「私に杖をつきつけるなど…何と愚かな…」

愚かなのはてめえだ!
ロックハートは杖を取り出すと呪文を唱えた。とたんに何かの波動が流れてくる。私はそれを避けたのだが……いかんせん足場が悪かった。階段の途中だったのでバランスを崩してしまう。気が付くと身体が空中に投げ出されていた。

あ    れ   ?

私はまっさかさまに落ちていく…ロックハートの驚きの顔が見える…ははは、すんごい間抜け。ってどうすんの!これじゃあ死んじゃうってば。何か、呪文を唱えないと……!
焦っている時だった、何かの波動が私を捉えると、優しく包み込んだのは。
これは一体…上を見上げるとそこには…

髪を振り乱した教授がいらっしゃいました。

う〜わ〜何でいるの!どうしてここがわかったの!
助けてくれたのはありがたいけど、その後が怖いんですが。私は教授の所まで引き寄せられ、教授に抱きしめられた。ものすんごい力だった。ロックハートがいるけど完全無視状態。教授の身体が震えてる……ごめん、教授。心配させちゃったんだね。

「心配させおって…」

教授がそうつぶやくと私を後ろに庇い、杖を構えた。

「ロックハート教授、これはいたずらや冗談のレベルを超えていますぞ。仮にも教授職とあろう者が、このような振る舞い…我輩には見過ごせぬ」

「スネイプ教授お待ちください。レイと私は相思相愛なのです!二人の愛を確かめようとしただけです」

はあ?何言ってんだこいつ。だからいつ、私が、お前を、好きだと言ったの!
教授も不愉快だという顔を隠そうとせず、眉間に物凄いシワを刻んでいる。も〜これ以上教授を刺激するのは止めて!教授は静かな声で、

「相思相愛と貴様が言うのなら、何故Mr,カンザキは逃げていたのでしょうな」

と反論すると、

「嫌い嫌いも好きのうちと言うでしょう?」

訳のわからん持論を展開しだした。こいつに付ける薬はない。

「初めて会った時から、運命を感じていたのですよ!なに、同性ということは私も驚きましたが、二人の愛の前には些細なことでした。私の真摯な求愛に、レイも応えてくれましたし、私は本当に」

教授がロックハートの声を遮るように呪文を唱えた。するとロックハートは縄でぐるぐる巻きに縛られてしまった。

「教授、何をするのです?私の話はまだ終わっていませ」

「そのような不愉快な話など、聞くつもりは無い。少しは反省したまえ」

教授はそう言うとまたもや呪文を唱えた。するとロックハートは空中に投げ出され、階段の手すりからぶら下げられてしまった。ちょうど蓑虫のようになっている。

「レイの味わった恐怖を少しは味わうといい…」

ロックハートがなにやら叫んでいたが、完全無視。教授は私の手を引くと、

「レイ、こちらへ来たまえ…」

そう言って歩き出した。
私ってば新たなピンチに陥ってしまった。くっそ〜ロックハートの奴!許さん!



教授は歩いている途中ずっと無言だった。握られている手が痛い。きっとものすんごく怒っているのだろう。どうやって言い訳したらいいんだろうか。私は心の中で溜め息をついた。
連れてこられたのは勿論教授の部屋だった。教授が先に部屋へ入る。私も続いて入り、ドアを閉めた。とたん、ドアに押し付けられる。
痛いってば、教授!文句を言ってやろうとして教授を見上げると、突然キスをされた。すごく乱暴で強引だ。身体はドアに押し付けられているため身動きが出来ない。

「んっ………せ…ぶ……まって……んんっ!」

何度も何度も角度を変えてキスをしてくる。凄く強引で、凄く激しい…教授が怒っているのが良くわかりました。でも苦しいってば!私は教授の胸をドンドンと叩いて講義をしたけど、教授ったら完全無視。キツク私を抱きしめると更にキスは激しさを増した。意識が朦朧としてくる。
いや、マジで意識が……。


気が付くと心配そうに教授が頭を撫でていた。
ってここはソファーの上?教授に抱っこされているようだ。

「レイ、すまぬ…あまりの怒りに我を忘れた…」

教授、珍しく反省してるんだ。キスで気絶することってあるんだな、驚き。

「心配かけてごめんなさい…まさかラベンダーを使って罠に嵌めるとは、そこまでの計算ができる奴だとは思ってなかったんだ。油断したよ」

私はそう言うと教授にチュッとキスをした。あ、何か私の唇が腫れている…さっきのキスのせいだ。どんだけ激しかったんだろうって話ですよ。
キスをしてから気づいた。私ったら、次の授業…!!

「やっばセブルス!僕次の授業があったんだよ!急がなきゃ!」

そう言って教授の腕を逃れようとするが、教授ってば離してくれない。何で?教授はニヤリと笑うと、

「安心したまえ。我輩がふくろう便を飛ばしておいた。次の授業は休んで構わんそうだ」

私を抱きしめると、

「我輩も授業がないゆえ……ここで二人きり、詳しく先ほどの経緯を聞こうではないか」

え〜!やっぱりそうなるのね…。

「や〜そんな大したことは無いですよ。ロックハートには何にもされてませんし…」

そう言いながら教授の腕から逃れようとするんだけど、教授ったらがっちりと抱きしめてるもんだから、逃れられない。教授はクスリと笑うと私に囁いてきた。

「信じられませんな。それでは我輩がしっかりとこの目で確認しないといけませんな」

そう言うと私の制服を脱がせにかかる。って昼間っから何やってんですか〜!

「ちょっとセブルス、昼間っから何やってんですか!……そんな所触っちゃだめだって…きゃ…ぁん…ちょっと、待ってってば〜!」

教授ったら、まったく人の話を聞いてないよ。こんなになっちゃったら、もう止まんないんだもん、今日は諦めよう。あとは私の貞操が守られることを祈るのみである…。

「もう待てない…」

教授、その声で、その台詞は反則です〜!!胸がドキドキしてきた。教授は私の首筋に指を這わせると、

「時間はたっぷりとあるのだ……今日は離しませんぞ」

甘い声で囁いてくる。
教授ったら、そんなこと言わないでよ。そんなこと言ったら、ずっと離さないで欲しいなんて、言ってしまいそう…。



私、今度は教授の罠に嵌っちゃったかも。でもこんな罠なら、嵌ってもいいかな……?


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