イブ 21時30分
レイは、覚悟を決めた。
(だって今日は先生に抱き上げてもらって、手当てまでしてもらったんだもの…最高の想い出よ?この想い出を胸に……グッバイ、私の片想い…!!)
玉砕覚悟でレイは言った。一世一代の告白を。
「あ…あのっ……私、スネイプ先生のことが好きですッ!!」
「………は?」
スネイプの目はテンになった。
(好き……我輩を好き……好きとは…スキ…と…は…………はあああ?!)
いやいや待て。ちょっと待て。
我輩、モテたためしなどない。
↓
これはいたずらでは?
↓
双子あたりが化けている?
↓
いや魔法がかかっているようには見えぬ
↓
ということはこれはマジ告白か…?!
(いやしかし……これはその…なんだ………)
「じょ、冗談も大概にしたまえ」
脳内でせわしなく考察した結果は、歯切れの悪いモノであった。
するとレイは瞳をウルウルとさせて、こう言ってきたのだ。
「先生…やっぱり本気にしてくれない…。こんなに、先生のことが好きなのに……」
スネイプは年甲斐もなく胸をときめかせた。
な、なんなのだこの娘の瞳は…ッ!!うるうるして可愛らしいではないかっ!!
それに唇はぷっくりとしていて、艶めいている……まるで、今にも食べられるのを待っているかのような―――いや、いかんいかん!
スネイプはそこまで考えてその思考を慌てて中断させた。
教師たるもの、これくらいで動揺してはいかん。スネイプは心でカツを入れると、レイに言った。
「信じられんな…。君のいつもの態度とは、かなり異なっているようだが……」
「だ、だって……恥ずかしかったから…っ」
モジモジしながらそう答える娘の、なんと愛らしいこと……スネイプは徐々に頭がクラクラしてきた。
(いかん……この娘、なにやらチャームの魔法でも我輩にかけているのか……?)
内心動揺しまくりつつ、しかし表情はいつもの陰険さを保ち、スネイプはやっとのことで言った。
こう言ったらおそらく、恥ずかしがり屋なこの娘のことだ、尻尾を巻いて逃げだすだろう、と考えて。
「“好き”、とはどれくらいの“好き”なのだ?」
「…え?」
スネイプはニヤリと笑う。
「“好き”ということは…我輩と恋人同士になりたいと思っているのだろう?我輩は大人ゆえ……生半可な“好き”では…君の思いに答えられませんな……」
「そ、それってどういう―――」
「やれやれ…はっきり言わないと解らんのかね?仕方ない……Ms,カンザキ…君の“好き”を証明したまえ…。正しく証明出来たら、答えてもよいが……」
低く、甘い声でスネイプは罠をかける。
こう言ったら、普通の生徒であれば逃げ出すだろう……彼は、そう考えたのだ。
しかし、セブルス・スネイプは甘かった。
恋に落ちた乙女ほど、怖いもの知らずなもの。しかもレイは、グリフィンドール……それを、これから先、嫌というほど彼は思い知ることになる。
顔を真っ赤にし、瞳をこれでもかというほどウルウルさせながら、レイは考えた。
“好き”を証明しろ―――。
大好きという気持ちを証明するには、一つしか思い浮かぶ方法はなかった。
なので、レイは覚悟を決めると、フフンと余裕で笑っているセブルス・スネイプの側へと行き、そっと、その唇にキスをしたのだった―――。
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