アラン・映画夢 | ナノ

1 誘拐

※このお話は、名前変換2,3を使用しています。



頭が……頭が痛い…。
頭が酷くガンガンと痛み、私の意識は浮上してきた。





「う……ん………」




自分の声がひどくかすれていた。昨日…どうしたんだっけ?仕事が終わってから、それから家に帰って、玄関の鍵を開けて、ドアを開けてから……。

私は目を開けた。するとそこには、見慣れない風景が広がっていたのだった。







みすぼらしい部屋だった。質素な、インテリアもなにもない部屋。

シーツが掛かっているだけのベッド。あればキングサイズだろう。それから少し離れた所には何も載っていないテーブル。そこから距離を置いた位置に私がいた。何故か、椅子に座らされた状態で。


ここ…どこ……?


自分の部屋ではないことは確かだった。私は立ち上がろうとした。



『痛ッ!あれ…?立ち上がれない…なんで……?』

どうして?立ち上がることが出来ないのだ。私は自分の身体を見て、そして驚いた。なんと、私は椅子に括り付けられていたのだ!

『え?え?どういうこと…?』

私は痛む頭で何とか考えようとした。何故このような状況に陥っているのかを。
そう、確かあれは、玄関のドアを開けてから―――。










『ふう……疲れたぁ…ただいま……』

誰も待っていない部屋に向かってただいまを呟く。それが、一人暮らしを始めてからの私の癖だったりする。
疲れた体を引きずるように、チェストの上に鍵を置いて、テーブルにバッグを置く。あくびを連発しながら、手が、照明のスイッチを押そうとした時、私は突然押し倒されたのだった。そう、「何か」に。

ソファーに頭から突っ込んだ私は、叫び声を上げようとした。だけどそれは出来なかった。何故なら私の首筋には硬い何かが押し付けられたから。


「動くな」


男の声だった。知らない声。伸し掛かってくるこの重さは、男の身体…?私、レイプされるの?一体何者?

「お金ならそこの引き出しに――」

「違う」

男に即答された。ってことはやっぱりレイプ?!私は大声を上げようとした。隣に住んでいるのは老夫婦だけど、さすがに叫べば聞こえるはずだから――って思ってたのに、男は私の口を手で塞いでしまった。

「声を出すな。これからは私の指示に従ってもらおう……」

「………」

こ、怖い。私一体何されるの?殺されるんだろうか……。身体がブルブルと震えてきた。

「言うとおりにすれば解放してやろう…」

男の声は冷静にそんなこと言ってきたけど、信じられる訳ないって。昨日だってニュースで若い女性がレイプされて殺される事件を見たばかりなのだ。立ち上がればなんとか逃げられるかもしれない。私は覚悟を決めた。レイプされるのは絶対に嫌だったから。

男は私を立ち上がらせようとした。その時塞いでいた手が一瞬外れた。その隙に私は咄嗟に叫んだ。チャンスは今しかない!


「誰か助けて…ッ…ぁっ…」


最後まで叫ぶことが出来なかった。何故なら首筋に、強い痛みが走ったから。私、撃たれた―――?急激なめまいと遠くなる意識――。
男の舌打ちが聞こえてきたのが最後、私は意識を失った。









意識があるってことは、私、撃たれたんじゃなかったんだ。それにどうやらレイプされたわけでもないらしい。私の身体は縄で椅子に括り付けられていたとはいえ、意識を失う前の格好のままだったから。

さすがにコートは脱がされてしまっていたけど、ちゃんとスーツを着ていた。ちょっとよれていて、意識を失う前と同じ格好とは言えないけどね。
頭痛は徐々に軽くなってきたようだった。私はもう一度辺りを見回した。ここがどこで、今が何時なのか、わかるかもしれない。





くすんだ壁の上側に、小さな窓があった。そこから光が漏れている。ということは今は昼間、なのだろうか。私は耳を澄ませた。音は聞こえない。ここが何処かは解らなかった。

けれども光が漏れるということは今が昼間で、ここは地下室ではなく何処かの家のような建物だということは解った。何とか立ち上がれないだろうか。私は頑張って立ち上がろうとした。腕に括り付けられている縄は堅く、取れそうにないし。


『うん…っしょ…ん〜〜!!……む、無理…みたい……』


立ち上がることは出来なかった。どうやら椅子は床に括り付けられているらしい。何のため、かなんてすぐに解った。
逃げられなくするため、でしょ。


私は溜息を付いた。口が括られていないということは、叫んでも助けは来ないということだろう。だったら叫ぶだけ無駄なんでしょうね。

私をこんな状態にした犯人に、是非とも文句を言ってやりたい。私は恐怖よりも怒りが強くなってきた。だってお腹はペコペコだし、仕事でくたびれてボロボロだったから。
そんな状態の女を攫って、何をしたいっていうの。


『も〜…なんなのよ……』


喉が渇いた。お水が飲みたい。私、ここに放置されて死ぬのかしら、と思っていたら、ふいに突然、ドアが開く音がした…ってドアあったのね。気が付かなかった。
音のする方を見た私は心底驚いてしまった。だって…だってあなたは……!!




「やっと気が付いたか………」


(H23,12,01)

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