Gift | ナノ


▼ あるひとつの物語




闇の力を使い、空を切って何日かぶりにホグワーツの私室に戻ると、
かつての自分のように、愛しい恋人が執務机に向かって書き物をしていた。
羊皮紙に羽ペンを走らせる音すら懐かしい。

「レイっ、こ、ここで何をしている?日本に逃げたのではなかったのか?」
「…遅いよセブルス。ずっと待ってたんだから…でもちゃんと来てくれたね」
「なぜ…なぜ戻ってきた?あれだけここは危険だと言っただろう!」
「私がセブルス一人置いて逃げるわけないでしょ。セブルス、髪伸びたね。長い髪も似合ってる」

そういうレイの髪は短くなっていた。
白く細いうなじが眩しい。
風の噂でデスイーターと激しく争ったと聞いた。
その時にあの美しい絹のような長い髪を失ったのかもしれない。

「よく我輩の部屋に入れたな。ディメンターや他のデスイーターたちがいたはずだが」
「忘れちゃったの?私、強いのよ」
「フッ、そうだったな」

瞳に涙を溜めて微笑むレイを静かに引き寄せ抱きしめる。
レイの温度、レイの香り、いつもは当たり前に腕の中にあったはずなのに…

「相変わらずいい香りだ」
「セブ、記念日おめでとう」
「ああ、おめでとう」

今日は二人の気持ちが通じ合った日。
いつもレイと祝ってきた。
豪華なものではなかったが大切にしてきた日だ。
会えないことを覚悟していたが、レイも同じ気持ちでここに来てくれていた。

「…ここに来ちゃって大丈夫なの?」
「あまり長居はできない」
「無理させちゃったかな」
「明日が約束されていない今、今日という日を大切にしたかった。無理などしていない」
「私も…」

どちらからともなく自然に唇を重ねれば、すべてを闇が飲み込もうとしている現実を忘れられる。
今あるのはとレイいう現実。

「何をしておるのかね?」
「ダンス」
「随分と甘ったるいレイだ」

額と鼻を擦り付けながらユラユラと左右に身体を揺らす。
首に巻きつけられた腕が、潤んで見つめる瞳が、密着させた身体が、熱い。
堪らず細い首筋に吸い付いた。
いつもは長い髪を掻き分けていたが、短くなったせいで露になったうなじが我輩を誘っている。
舌を這わせれば熱いレイの吐息と声が耳を擽る。

「んん、セブ…」
「レイ、誰よりも愛している」
「セブルス…してほしい」
「…時間が足りない…短い時間の中でお前を適当に抱きたくない。必ず生きると誓う。だから、その時まで…」
「…わかった。約束」

誓いのキスをレイの唇へ贈る。
そしてお互いしがみつくようにしばらく抱きしめ合った。
ローブに何度も落ちるミュウの涙が、闇で薄汚れた我輩を清めてくれている気がした。

「セブルス、これあげる」
「何かね?」
「私が作ったパワーストーンのお守り。必ずあなたを守ってくれるから」
「ありがとう。これからどうするのかね?」
「ルーピン先生たちと合流して、ここを守るわ」
「そうか…無理はするな。危なくなったら…逃げろ」
「セブルスも、気をつけて」

唇が離れ、身体が離れ、腕が、手が、指が、
…離れたくない。

---

数日後、我輩は死んだ。
そしてレイも。
お守りのおかげで何の痛みも感じず最期の時を迎えられた。
レイは遺書を書き残していた。
我輩の潔白を証明する為の遺書を…そして愛の言葉を…。

『セブルス---私の魂はいつもあなたと共に』


<喜びの声>


このお話は、miuさんのサイトで30000Hits記念の企画で私がリクエストして書いていただいたお話になります。キーワードは【地下室*ダンス*うなじ】

難しいキーワードだったと思います。確か…微裏をお願いしていたかと。
微裏って難しいですよね…miuさん、すいませんでした。そして、本当にありがとうございます!

とても切ないお話……。ホロリとしてしまいました。

余韻に浸りながら、彼への愛を滾らせてしまいました(笑)

素敵なお話、本当にありがとうございました!大切に飾らせていただきますッ

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