ナナと教授 | ナノ

1 つきはみていた




あれはね、ぼくが、もうなんかいくりかえしたかわからないくらい、たくさんのよるをすぎたころのはなしなんだ。





そのひのぼくは、みがつぎだった。

ぼくがいつものように、くらいそらのしたでほしといっしょにきらきらとかがやいていたら、とてもきれいなおんなのこが、ぼくのひかりのしたで、ぼくをみつめながらささやいていたんだ。

そのこはね、くろいかみでくろいひとみのおんなのこだった。とてもきれいなこで、おおきくなったらきっときれいになるんじゃないかなって、ぼくはおもったんだけれど。

あ、そんなことはきいてない?はなしがだっせんしてる?

ごめんごめん、ぼくってよくそういわれるんだ。きをつけなきゃね?きみのねものがたりに、おはなしをしているんだから…。

ええとね、はなしはもどるけれど、そのうつくしいしょうじょは、なまえをナナっていうんだ。

このがっこうににゅうがくしてまもなくて、とてもふあんがっていた。あのこのちいさなむねのふるえが、つきのぼくにもかんじられるくらい。

さいしょはおやからはなされ、かんきょうになれるためのきんちょうだってぼくもおもってたんだけれど、あのこのむねのふるえは、それだけじゃなかったんだね。



あのこはね、こいをしてるってぼくにいったんだ。


あのこのきらきらとかがやくひとみは、ぼくのまわりにまたたいているどんなほしよりもかがやいていて、そしてとてもうつくしかったよ。
ほおをほんのりとそめて、こいをするよろこびがあふれていたね。


ぼくはあのこのそのことばをきいてとてもうれしかったんだ。
だからぼくもいつもよりもっとかがやいて、あのこをしゅくふくしてあげた。
あのこはきっとわからなかったかもしれないけれど。



けれどつぎのしゅんかん、あのこのくちからこぼれでたささやきにぼくはしんそこおどろいてしまった。
そのこのはつこいのあいては、しんじられないようなあいてだったから。



そのひとのことをしりたい?



きになるでしょ?



そのあいてのひとはね、ぼくのようによるにいきるひと。

かれはね、ぼくであるつきのように、よるのやみにいきるしかない。
かれのこころはね、かなしみにみちてる。


あ、うたがってるね?どうしてわかるのかっていいたいんでしょ?
だってわかるんだもの。


なぜならぼくは“つき”だから。


かれはぼくのように、かがやくたいようのひかりをうけてかがやくしかないという、けしてみずからはかがやけないという、かなしいさだめをもってる。
だからかれもときどき、つきであるぼくをみあげてささやくことがあるんだ。
きっとぼくにすこしこころをひらいてくれているんだろうね。

どんなことをはなしているのかって?



やっぱりきになる?

ふふ…でもちょっとまって?


まずはあのことかれのきもちを、こころのかっとうを、ふるえを、おもいをかんじてくれなくちゃ。




じゃあ…しんこきゅうしてくれる?





これが、ぼくがかんじたあのことかれのおもいだよ…。


ふたりのせつなくすれちがうおはなしを、きかせてあげるね―――。


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