ナナと教授 | ナノ

1 無邪気な恋人





最近、私の周りでは恋愛話が盛んなの。
誰と誰が付き合い出した、だの、あの人が意外な人を好きらしい……とか。

私の親友であるジェニーは、セドリックにお熱状態。私がハロウィーンで歌を歌った時なんて異常に羨ましがってたものね。
あの時からおかしいなって思っていたんだけれど……セドリックってもう付き合っている人がいるじゃない?
私がそう言ったら、ジェニーは一言、きっぱりとこう言った。

「好きなものは好きなの!いつか私にもチャンスが巡ってくるかもしれないじゃない?その時まで自分を磨いておかなきゃ!」

そう言ってヘアアレンジに余念がない。
頑張るのは良いけれど、そろそろ、私にも洗面所を貸してほしいのだけど……。


だって、今日は堂々と教授に逢いに行ける日なのだ。少しでも可愛らしくしたいじゃない?
私は髪を整えると談話室へと向かった。レポートを集めるためだ。


「嫌な役を押し付けちゃって悪いわね……ナナ」

ハーマイオニーが申し訳ないって顔をして私にそう言ってきた。

私、全然嫌じゃないの。むしろいつもしたいくらいよ、そう言えたらどんなに楽か……。
でも駄目よね。私達が付き合っていることは内緒なんだもの。教師と生徒が在学中に付き合ってるなんて大変なスキャンダルだろうし。
教授とおおっぴらにイチャイチャできないけれど、我慢しなきゃ、ね。
私は微笑むとハーマイオニーに言った。

「気にしないで…大丈夫!」


最後、ギリギリまで必死で書いていたロンが最後。やっと出来上がった、インクも乾きたての彼のレポートを一番上に乗せ、私は教授の元へと向かったのだった。




「ナナ……お前か。いつもすまぬ」

「気にしないで?頑張ってセブルス!もうちょっとで……終わる…と思うわ……」

「うむ……」


教授のお部屋に行ったらレポートの山だった。提出が重なったみたい。教授、忙しそう…。
私はそっと席を立って、教授に紅茶を淹れに行く。お仕事の邪魔をしないように、そおっとカップを置いて、私はソファーでまったりとくつろぐ。

普通の恋人同士とはちょっと違うけれど、私は教授と一緒の空間に居られるだけでも幸せなの。教授が一生懸命にレポートの採点をしている姿を盗み見ながら、そう思って一人ほんわかしていたら。
教授が突然、意外な台詞を言ってきた。

「ナナに、折り入って頼みがあるのだが……」

「?なぁに?」

珍しいなぁ。教授が私にお願いって何だろう?不思議そうな私に、教授はレポートから顔を上げずに言ってくる。

「明日……所要でダイアゴン横丁へ行かねばならん。明日は休日であろう?もし、ナナに何の予定もなければ、少し付き合ってくれんかね?助手が必要なのだ」

え?明日?
生徒は学期中、学校の外に出ることは禁止のはずでしょ?不思議に思った私は教授に尋ねた。

「それは、私は構いませんけど…生徒は学期中、学校の外に出ることは禁止ではなかったでしょうか?」

「我輩の許可があれば問題ない。いつもナナには我慢させてばかりですまないと思っているのだ。もし…時間があればどこかで食事でも―――」

「ホント?!嬉しいっ!行く!絶対行きますっ!!あ〜んセブルス大好きっ!!」

感激のあまり私は教授に抱きついてしまう。背中にぴったりとくっつきながら、喜びを体中で表現しちゃうんだから!
それってデート、でしょ?
教授とデートでしょ!どどどどどうしよう凄く嬉しいっ!!
だって卒業するまでそういうコト絶対できないって思ってたんだもん!!嬉しすぎるよぅ。

「う…ッ……ナナ……嬉しかったのは…十分解った。解った……から……」

「明日何時に行きますかっ?!私何を着ていったら良いですか?やっぱりこういう時って一番可愛らしい格好をした方が良いですよね!ってことはやっぱりあの服にしようっと――」

「お、落ち着けナナ!そして我輩の話を聞きたまえ……」

「あ、ごめんなさい……」

嬉しさのあまり暴走しちゃったよ私。教授、怒ってるかな?仕事の邪魔をしちゃったから。
私がそおっと教授の横顔を伺うと、教授の顔色が凄く良くなっていた。

なんだか……顔が赤いような……?

「明日……おほん……10時に我輩の部屋へ来たまえ。煙突ネットワークでダイアゴンへ向かうゆえ……。あー……当然ながらこのことは他の輩に言ってはならんぞ…」

10時?!そんなに早くから教授と一緒にいられるんだ!う、嬉しすぎる!!
私は教授のその言葉を聞いて、さらにぎゅっと教授に抱きついた。

「わかりました!!10時ですね、遅れないように準備して来ますからっ!!」

「!!!…う……わ、わかった…かね…?」

「?はい、了解しました……けど……セブルス、どうかしましたか?なんだか、苦しそうです、けど……」

「……………気にするな。それよりも…我輩はな……おほん…レポートの評価の途中だ。今日はもう寮へと……戻りたまえ」

あ、そうだった。教授のお仕事の邪魔をしちゃ駄目だよね。何やってるのかしら私。あまりに嬉しすぎて派手に暴走ちゃったわ。
私は慌てて教授から離れた。けど嬉しさが堪えきれない。
私は教授の頬にチュッとキスをすると囁いた。

「セブルスありがとう!大好きっ!じゃあ、私はこれで失礼しますね」

「あ……ああ…。気をつけて、帰りたまえ」

「はい。失礼します」


教授の部屋を出るとき、教授が何やらブツブツと呟いていたのが気になった。
?何て言ってたのかしら?




*****




ナナが帰ったか…。我輩は深〜い溜め息をついた。


我輩の恋人は可愛らしい。素直で、無邪気で……そして無自覚だ。
我輩は教師だ。だが、お前の恋人でもあるのだぞ?
それなのに、あんなにぴったりと身体を我輩に密着させおってからに……当たっているのだ!

ナナはまだ子供だ。心も、身体も発展途上なのだ。そう、解っている。卒業するまではそういうコトには及ばぬつもりでいる。我輩は教師。そう、教師だからな。


いやしかし……おほん……ナナの胸は結構なかなか……ですな。


この間、クリスマスをこの部屋で祝った時、キスをしながら、何気なさを装って触れたときよりも、成長しているように見受けられますな。
勿論服の上からですぞ。残念ながら、だが。


………本音を言えば、非常に見たいし、触れたいが……我慢だ。卒業までは……我慢せねば……。




あんなに無邪気に抱きつかれて、我輩の身体は思わず反応してしまった。我輩とて男だ、生理的反応を起こすのは仕方あるまい。本当はナナにずっとここに居て欲しかったが、それは危険極まりないと我輩の理性はギリギリで判断した。

あのままでは間違いなく、ナナをおいしく頂いてしまっていたであろうからな。



……卒業まであと4年もあるのか。
我輩はこの苦行に耐えられるのであろうか。近いうちに座禅でも組まねばなるまいな。我輩はまた、溜め息をついた。



……取りあえず明日は耐えるしかない。


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