11 礼儀作法は大切です
「ルシウス先輩、東洋人にその挨拶はいかがなものかと思います」
完璧に固まった私の横から、澄んだ声が聞こえた…って貴方、誰?
「レギュラス……私がしたことは、無礼に値することだったと?」
「はい、東洋では、そのようなスキンシップは好まれないと、以前本で読んだことがあります」
ってえーー!!
この、きれーな声は、素敵な黒髪は、イケメンな顔は……レギュラス・ブラック?!
なんか凄い!!凄すぎるなにこの状況…。
完璧に凍りついた私をよそに、会話は進んでいく。
「なるほど。では、このような場合、挨拶はどうすべきなのだ?」
「はい、文献によれば、お辞儀をするのだとか。45度の角度が望ましいと、書いてありました」
「お辞儀…か。手を握るのは…?」
「会社などではそのような挨拶が主流のようですが、東洋…とくに日本ではお辞儀が正式な挨拶の方法のようです」
「なるほど…。シズノ…シズノと呼んでも良いだろう?先ほどは失礼した。どうか許してほしい。スリザリンにようこそ……」
いつの間にか日本の礼儀作法を伝授されたルシウスが、私に完璧な角度で挨拶をしてきた。
ま、マジで45度だ………。
後ろでレギュラスが笑っている。黒い微笑みだった。
なんか怖い……あの子……。
「あ、あの…ッ…こちらこそよろしく…お願いします……」
「私はこの後校長先生に呼ばれていてね……君を案内するのは……セブルス、頼む」
あ、そういえばセブったら何処にいたの?
呼ばれたセブルスは静かにこちらにやってきた。心なしか眉間のシワが増えてるんですけど…。
「……わかりました。おい、いくぞ」
「う、うん……」
名前も呼んでくれない。
なんでそんなに不機嫌なの……?
せっかく、一緒の寮になれたのに……。
私、リリーみたいに可愛らしくないし、緑色の瞳なんて持っていないし、赤毛でもないもんね…。
厄介なモノを押し付けられたって思ってるんでしょ?
寮へと歩きながら、私達は無言だった。
セブルスは、何も言わない。不機嫌にムスッとしてる。眉間のシワなんて2.5pはあるんじゃないだろうか。
対する私だって何も言えない。こんな雰囲気じゃあ、何も話せないじゃない…?
私、グリフィンドールになるべきだった……?
あまりの沈黙にべそをかきそうになったその瞬間。
急に、セブルスが私の腕を掴んできた。
「えっ?」
彼の予測できない行動に私はとまどうばかり。だって、彼は私の手の甲をゴシゴシとこすりだしたから。彼のローブで。
「寮に戻ったら消毒してやる」
へ?
「強力な消毒効果がある薬草を使ってやる…」
こ、これってもしかして……。
「セブッ!!」
「ば、馬鹿!!こんなところで抱きつくな!!」
「だって嬉しかったんだもん!ホントは…ホントはね……凄く嫌だったんだ…だから…だからホントに嬉しい。ありがとう、セブ……」
「フン……」
そんな返事をしてるけど、私はばっちり見てしまった。
セブルスの耳が赤くなっているのを。
(寮の談話室から先は…アリシアに案内してもらう…)
(えー!どーしてセブじゃないのぉ?)
(お前は阿呆か?僕が女子寮に入れるわけがないだろう!)
(どして?私の部屋に来れば良いじゃん!)
(なっ……!)
(H23,08,08)