あなたに逢いたくて | ナノ


 10 時を駆ける…私?



わからない。
二人にそんな眼差しを向けられる理由が。

私は、貴方達とは初対面のはず。大体、次元が違うんだもん。
私、困ってますって顔をしているのがよく解るのか、校長先生は笑うと言った。




「やはり、信じられんかのぅ?ワシ達と実際に話をするということ自体が…」

「はい…それはもう……」

「そうじゃろうなぁ。なにしろワシらは、物語の中の人物のようじゃからな…」

「はい、その通りで……って…何故それを?!」




言ってないのに!!




両目を有り得ないってくらい見開いて二人を交互に眺める。校長先生は勿論、教授も一切動揺している様子がなかった。

どうして?!



「不思議そうな顔をしているな、シズノ…」

教授のその言葉に、何度も頷く私。

「当たり前です!だって私、そんなこと、一言も話していないのに……!」

すると教授は苦笑い。私を見つめながらこう言ったのだ。

「いや、お前は我輩に話してくれたのだ」



え?嘘でしょ!記憶にないもん。


そんな大事な事を言ったりした瞬間を忘れるなんて、有り得ないし。
信じない、って顔をしているのがわかったのだろうか?教授は苦笑したまま言ってきた。


「今のシズノではない。未来のシズノから聞いたのだ」




へ?
未来の私?
なんだそれ。“時を駆ける少女”じゃないけど私。



「それは……どこに突っ込めば良いのでしょう?」

「どこにも突っ込むべき箇所はない」


真面目に答えないでよ教授!そして訳がわかんない!
ますます混乱する私に、校長先生は笑いながら杖を振った。そうしてこう言ってきた。


「これなら、信じるかの?」

そう言って校長先生が見せてくれた紙切れは、1枚の写真だった。
マグルの写真じゃない。魔法界の写真だ。何故なら写真に写る人達は、動いていたから。




その写真は、ホグワーツの生徒の写真のようだった。


中央に、綺麗な女の子。緑色の目が素敵。
その子にちょっかいを出しているメガネの少年。
隣で呆れているハンサムな少年。メガネの少年の右隣りには、頬に傷のある少年が苦笑している。
ハンサムな少年の隣りにはおどおどした、そばかすのある少年。小柄で、ネズミみたいな感じ。


そして頬に傷のある少年の横にいるのは、黒髪の少年。一人だけこの場にそぐわない雰囲気を醸し出している。
どうやら、写真が嫌いらしい。逃げようとしているみたい。
その少年のローブを掴み、一生懸命引きとめようとしている女の子がいる。
その子の顔は―――、




わ た し ?




髪の長さこそ違うけど、どこからどうみても、私に瓜二つだった。
嫌がっている(ように私には見える)黒髪の少年のローブを掴みつつ、無理やり腕を組んでいる。
そして、耳元で何かを囁いているみたい。少年の頬がほんのりと染まるのがわかった、少年はとても…肌の色が白いので。

ってかこの少年、どっからどうみても、教授っぽいんですけど。私は思わず教授を見た。
すると教授ってば……、

咳払いしながら紅茶を飲んでるよ?何故か、顔色がとても良かった。



か、可愛い教授……。思わず、じいっと教授を凝視してしまう。



「な、何を見ているのだ……」

「だって……この男の子、セブルス、でしょ?」

「………………そのよう、ですな……」

「この、セブルスの横に写っている子……これって―――」

「シズノだ。それは、間違いなく、シズノ…。この世でただ一人の、我輩の想い人……」

「セ…セブルス……」



は、恥ずかしい〜!!ちょっとなにその台詞校長先生の前でそんなストレートにそんなイイ声でしかも至近距離で言わないでよぉ〜!!



私の顔からは湯気が立っていると思う。だってそんな台詞……乙女の夢でしょ!
教授、陰険教授なんて嘘なんじゃ?教授の中には意外にも乙女成分が多いのかも……。


校長が私達のそんなやりとりをニコニコしながら聞いていた。


「ほっほっほ…熱いのぉ〜」

なんて言いながら。




……はずかしー!!


(H22,11,26)



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