8 手を繋ぐ
私は今、恥ずかしさに爆発しそうになっています。
何故かというと、なんと、あの陰険だと言われている薬学教授と一緒に手を繋ぎながら、校長室へと向かっている所だからです。
教授ってばすっごく大胆。今、丁度学期前みたいだから生徒はいないだろうけど、他の教授だって、ゴースト達だっているでしょうに。
私みたいなコドモと一緒に手を繋ぐなんて…大きなリスクでしょう?
私、知らず知らずのうちに、何か言いたげな顔をしていたのだろうか?
教授はクスリと笑うと言ってきた。
「手を繋ぐのが、そんなに気にすることかね?」
ばれてたんだ…。けど、教授に良い事なんて全然ないような気がするけど。
私はためらっていたけど、言ってしまった。
「気にします…よぉ。ゴーストだっているし、他の教授に見られでもしたら―――」
「皆知っていることだ。問題ない」
「あ、そう…知ってるんですか―――ってええっ?!」
「シズノの声の方が、よっぽど人が集まるな」
「セ、セブルスが、さらっと凄い事言うからでしょう?!」
「そうかね?」
「そうだよ!それ、一体どういう事なの?さっきも結局、話してくれなかったでしょ…」
そう。ちゃんと説明するって言ってくれたのに、教授ってば食事を終えた後、フクロウが持ってきた手紙を見るなり、こう言ってきたのだっだ。
「詳しい話は、ダンブルドア校長の部屋ですることになった。校長室へと向かうぞ」
って。
んで、今に至るってわけ。
私は不思議でたまらない。つい勢いであんな告白めいたことまで言っちゃったけど、冷静になって考えてみるとおかしな事が沢山ある。
どうして教授は、私の名前を知ってるの?
どうして教授は、もう一度愛す、なんて言ったの?初めて逢ったはずなのに。
どうして私は、ここの世界に来たの?どうやって?(これは俺様野郎の仕業…?)
しかも、ダンブルドア校長は、何かを知っているみたい。教授の口ぶりは、そんな風にも受け取れる。
なんだか緊張する。
胸がドキドキする。教授と一緒に手を繋いでいるからか、それともこれから知ることになる、私が知らない、未知の情報に関する恐れからか。
恐らく両方だよね。
私は無意識のうちに、繋いでいる教授の手をぎゅっと握ってしまった。
教授は、緊張している私のことを気づかってくれた。きゅっと手を握り返して言ってくれる。
「心配するな、シズノ。我輩が共にいる。シズノは、一人ではない」
「セブルス……」
教授のその言葉が嬉しくて、思わず教授をじっと見つめてしまう。すると教授は私から視線を逸らし、俯いてしまった。何故か、顔色が良いみたい。
?どうしたんだろう。
「セブルス、どうかしましたか?」
「いや……シズノは、突然の出来事に混乱しているのだろう。我輩は、十分に理解しているつもりだが…だがな、我輩は嬉しいのだ。シズノに逢えた事が、確かにここに、存在していることが未だに、信じられぬ……」
教授はそう言うと、私をじっと見つめてきた。
わわ、真剣な教授の眼差しが眩しすぎる…ッ!
わー格好いい!!素敵すぎるッ!!うっとりしちゃうよぉ〜……。
顔に熱が集中するのがわかる。だって無理もないでしょ。すっごい格好良いんだもん!
教授は苦笑すると囁いてくる。
「熱い抱擁は後にしよう…。そろそろ、校長室だからな、シズノ…」
「う、うん……」
今、完全に二人の世界だったよね!そうだよね?!
教授がガーゴイルに向かって合言葉を言っているのをぼおっと眺めながら、やっぱりこれは夢じゃないんだろうかって、未だに疑ってしまう私だった。
(H22,11,26)