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「って、え?綾っちまだなんか術かけてたの?!」
「まぁ…ちょっとだけ…」

亜梨馬以外が不思議に思う中、綾子が笑顔で術を解くと、侵入者二人を間に挟み込むような位置で、
綾子と杏と向き合うように、突然鎌を手にした璃尾狐の姿が現れた。

「えぇ?!璃尾ちゃん?!」
「なっ?!いつの間に…!」
「やっぱりね…さっき、社出る時私より先に出たはずの璃尾狐がいないのが気になったけど、
何重にも術をかけ重ねてたのね…」
「まさか、さっきの簡単な術が甘かったのは、この術をかけるから注意を削ぐためにわざと荒く?」
「エヘヘ…」

侵入者の狐の言葉に、否定も肯定もせず、笑う綾子にその場にいる全員が驚く半面、少し不気味ささえも感じていた。


術に強弱をつけるだけでなく、それを重ねるという技術。
また、それを仲間にさえもばれないように施す、ある意味冷静…
自らの作戦のためなら、仲間さえも騙すかもしれない、冷酷とも取れる行動に、
特に亜梨馬、杏、璃尾狐はお互いの顔を見合わせていた。

「それじゃ、あの子連れてきますね〜!」

そんな雰囲気を感じてか、はたまた感じずに次へ意識を向けたのか、
綾子が再度兎の姿になると、一気に駆け出した。

「ちょっ、綾っち!私が空から行ったほうが明らか早いでしょ?!」
「いい…ほっといていいよ杏」
「亜梨ちゃん…でも…」
「…今回特に暴れることがなかったから、体動かしたいんじゃない?」
「むしろ、走りたいかもですよ?ずっとあの子について歩いてましたし…」
「…奴は狸なのか?兎なのか?それとも犬なのか?」
「…まぁ、ある意味全部だね飛影…」

亜梨馬が侵入者2とも知り合いなのか、名前を明かしていないはずが、
何の躊躇もなく話す姿に、杏はどこか寂しそうな表情を浮かべた。

「ところで亜梨馬…梅流が迷い込んだのも何かの縁だ…昔持ちかけた話、考えてみてもらえないかな?」
「蔵馬…」

侵入者であり、狐のコミュニティーの長であり、亜梨馬が蔵馬と呼ぶその男は、
昔亜梨馬に何らかの提案をしていたようで、改めて亜梨馬に問いかけた。

「昔持ちかけた話って?」
「…この、蔵馬が率いる狐のコミュニティーとの同盟を組むという話」
「え…?私、聞いてない…」
「うん。ごめん…」

ずっと一緒だと思っていた亜梨馬に、自分の知らない親しげな人がいるというだけでもショックだったのが、
それ以上に自分の知らない所で同盟話が来ていて、それを知らされていたかたことに、
杏はなんとも言えない感情を覚えた。



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