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先程の杏の攻撃は、攻撃に見せかけた束縛の術だった。

「こちらも、無意味に攻撃なんてしようとは思ってませんから…話を聞かせていただくために、
ちょっと手荒ですが、拘束させてもらいました。あの子を迎えに来たんですよね?」
「わかっているなら、彼女を早く返してもらえないか…」
「もちろん、お返しします…ですが、一つ聞かせてくれませんか?」

杏が狐と話をしている間、どうにかして拘束から逃れようと考えている、
第二の侵入者の様子を綾子はじっと見つめていた。

「何だ…」
「いえ、おかしな行動を取らないように…と思いまして…下手に動かれると、
ウチの大事な天狗様に危害が及びますから…その前に止めないと…」
「ちっ…殺すぞ…」
「別にいいですよ〜…この体もまた作り物ですから…」
「何…?」
「あれ?敵の言葉信じちゃいます?意外と純粋なんですね…」
「貴様…」

綾子が挑発するように背の低い侵入者と話していると、
突然ビリビリと肌を指すような傷みを感じるほどの冷気が近づいてきた。
ゆっくりとも見えるが、綾子にも引けを取らない速さで現れた亜梨馬は、
侵入者の姿を見ると、警戒で強張った表情を少し崩した。

「誰かと思えば…」
「やぁ…まさか、君の領地だったとは…」
「あれ?知り合い?」

亜梨馬が杏の術によって拘束されている二人を見ると、ため息を付きながら声をかけた。

「昔なじみだ」
「えぇ?!私知らないんだけど!」
「お前と出会う前だからな…」
「え?なにそれ…ほぼ生まれたときから一緒にいるはずの私より前って…」

ほぼ、生まれたときから一緒にいるはずの自分が知らない昔なじみがいることに、
杏はただ驚いて侵入者の狐と亜梨馬を交互に見比べた。

「まさかとは思ったが…やっぱりあの子はアナタの所の狐だったとは…
ウチのバカ狸が何回も世話になったみたいね…勝手に侵入したこともあったみたいだし?」
「バカ狸じゃないです〜化け狸です〜」
「同じようなもんだろ…」
「ぶ〜」

呆れる亜梨馬の言葉に、綾子が膨れた。

「いや、今回は俺も少し冷静さを欠いていた…むしろ、彼女達に対応してもらって、頭が冷えたよ…」
「ウソつけ…もう少し亜梨馬が遅かったら…」
「飛影?何か…」
「ふんっ…」

言葉と顔には出さないが、威圧を感じさせる呼び方で仲間を呼ぶ狐に、
亜梨馬はやれやれといった感じで苦笑した。

「杏、拘束を解いてやって。特に危害を加えるような奴らじゃないから…それから、綾ちゃん。幻術をさっさと解きなさい。」

まず、杏が術を解除すると、侵入者二人の見えない束縛が消え、二人は自由に体を動かすことができるようになった。



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