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暫く歩いていくと、木々が背丈ほど伸びている所に差し掛かったが、
綾子は特に苦とも感じていないように、どんどん先に進む。
一方、少女は歩き慣れていない土地というのもあって、
背丈を覆うほどの木々に苦戦を強いられていた。

前も見えずらい道で、どんどん綾子との距離が離れることに焦る少女だったが、
足元に何か触れた気がして、驚いて立ち止まった。

「ひゃっ?!え?何…?」

その場でしゃがんで足元を確認するが、特段異常は見当たらない。
確かに、何か足元に触れた…むしろ、何かが通ったように感じたものの、
見る限りでは何もないため、立ち上がると、案の定前を歩く綾子の姿は見えなくなってしまっていた。
再び恐怖が芽生え始めたが、立ち止まっているわけにも行かず、意を決して少女はゆっくりとあるき出した。


しばらくすると、先ほどと同じような感触を感じ、少女はだんだんそれにさえも恐怖を感じるようになってきた。


そんな様子を、綾子は少し離れた所で見つからないように少女を見ている。
隣には、海里の姿があった。

「そろそろかしら?」
「そうですね…だいぶ足元にいたずらしてたみたいですもんね、なつさん…
仕掛けるなら、そろそろかもしれないですね…」
「迷子のあの子には申し訳ないけど、【すねこすり】としては、
やっぱり最後は転ばせないといけないから、転んだら合図ね…」
「そこで海里さんの登場ですね…余り怖がらせないでくださいね?」
「それをあなたが言う?あの子、綾ちゃんが側にいるから安心してるみたいだけど、
よく考えたら、喋りもしない仮面をつけた少年との少女ともつかない子供が一緒にいる方が、ずいぶん怖いわよ?」
「褒められても、何も出しませんよぉ〜葉っぱの金貨でよければいくらでも出せますが…」
「褒めてないから…それに、今どき金貨はないわ…」
「それじゃ、葉っぱの金の延べ棒?」
「どっちにしても、元は葉っぱじゃない…」
「そうでした…」

そんなことを談笑しながら様子を見ていると、歩き続ける少女の姿が一瞬で消えた。

「あ、やりましたねなつさん…」
「そうね…それじゃ、そろそろ準備するわ…」
「音でも出しましょうか?ひゅ〜どろどろどろどろ…って?」
「いらないわ…綾ちゃん楽器にまで変化して、本気でいくでしょ?」
「もちろん!やるからには…」

そんな事を話していると、二人の元になつが人間の姿で戻ってきた。

「あれ?なつ、なんで猫じゃないの?」
「え?転ばせるし…」
「え?あれ?なつさん、転ばせるとき、猫のままじゃないの?!」
「うん。だって、こするだけなら、猫のままの方がいいけど、転ばせるとなると、
猫の姿で巻き込まれて怪我するのも嫌だし…そもそもこの姿で、足掛けたほうが楽だし…」
「えぇ?!なんか、そこだけ急に雑?!」
「そうかな?」

そんな衝撃的事実をなつから聞かされた綾子が驚いてる間、海里は苦笑しつつ、笑顔…
否、そもそも表情を無くし、伏し目がちにし、姿を半透明にしながら少し中に浮くように少女の元へと進み始めていた。

一方少女は、突然何か(なつの足)に足音を取られ、
その場で転んだまま、座り込んでいた。

完全に綾子とはぐれたことで、精神的にも恐怖によるダメージが大きく、
転んだことで身体的にもダメージを受け、思わず涙が溢れ出していた。



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