そんな話をしていると、杏と共に結界の見回っていた璃尾狐が戻ってきた。

「ただいま戻りました」
「おかえり璃尾狐ちゃん!杏ちゃんは?」
「侵入者があったらしい結界以外は、異常なしでした亜梨ちゃん。
ただ、杏ちゃんは侵入者と綾子ちゃんの気配が接触したようなんで、
遠くから様子を見てくると飛んでいきました」
「攻撃音とかしないみたいだし、気配も嫌じゃない感じだから、敵さんではないのかしら?」
「そうだね海里…それか、綾子ちゃんがしくじったとか?」
「なつちゃん、流石に綾ちゃんは迷子にはなっても、
相手に騙されて侵入者を招き入れるのはないんじゃないかな?」
「琉紅ちゃんの言う通りだね…フラフラと【迷子】になっても、
騙すのが綾ちゃんの専売特許だし、騙されることはないでしょ…」

琉紅の意見に亜梨馬が同調した瞬間、皆が拠点としている社まで、急に妙な気配に覆われた。

「なにこれ…」
「綾ちゃん…ですかね?」
「なんか、変な感じ…」

海里・璃尾狐・なつが、不快まではいかずとも、
突然変な気配に包まれたことに、微かな嫌悪感を抱いた。

心細くなったのか、琉紅は今度は近くにいた亜梨馬の着物の袖をキュッと掴んだ瞬間、
大きな風とともに杏が戻ってきた。

「杏ちゃん!おかえり!」
「ただいま、琉紅ちゃん」
「敵か?」

琉紅に声をかけられ、返事をしながら社に入ってきた杏に、緊張した面持ちで亜梨馬が声を掛けると、
杏は少し険しい顔で首を横にふった。

「それがね…遠くで見てた限りでは、敵ではなさそうなの…迷子は迷子みたい…なんだけどね…」
「けど?」
「うん、海里ちゃん…どうも人間ってわけでもなさそうなんだよね…」
「人間じゃないの?それじゃ、綾ちゃんはなんで、こんな空間作ったの?」
「わからないのよね琉紅ちゃん…もう少ししたら、綾っちも帰ってくると思うから、
そこで詳しく聞いたほうがいいかも…多分だけど、綾っちもちょっと気配が人間と違うから、
一応警戒したみたいで、時間稼ぎも兼ねて、結界内の一部に迷路作ったみたい」
「あぁ、それでか…迷わせるために、結界を狂わせたから、私達まで少し影響がでたんだね…」
「だね亜梨ちゃん…」

杏が簡単に説明をしていると、出ていったときと同じ兎の姿をした綾子が戻ってきて、社に入った瞬間姿を戻した。

「たっだいま〜です」
「侵入者の正体は?」
「う〜ん…私も気配が人間じゃなかったんで、一応近づくのはやめたんで、憶測ですが…あれは狐さんですね…」

真っ先に声をかけてきた亜梨馬に、綾子は険しくはないが何時になく真面目な顔で答えた。

「狐?妖狐の類い?」
「はい亜梨ちゃん…おそらく…ですけどね。旅の途中で、ここの近くに妖狐を中心として、
ここと同じように様々な妖怪が集まるコミュの話を聞いたんですが、多分そこの狐さんかと…」
「その妖狐が迷い込んだと?」
「う〜ん…多分ですよ?確か、そのコミュにいたような気がするんですよね……」

亜梨馬の問いかけに、はっきりと答えを言わない綾子。

「ちょっと待って、綾っち?あのさ、さっき私も見に行ったけど、コミュをまとめるような雰囲気じゃなかったよあの子?
コミュの長にしては、まだ幼いというか…」
「見た目で判断してはだめですよ杏ちゃん…と言いたいところですが、
確かに、長はあの子ではないと思います…以前、そのコミュの結界の中入ったんですが…」

以前、綾子は旅の途中に他のコミュへの侵入を図ったのか、なにかを思い出すように話し始めた。



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