おそらく、杏と璃尾狐も感じているのであろうが、相当広い範囲で結界があるのか、
どうやら2人が見ていない所で何者かが侵入をしたようだった。

「侵入者か…」
「亜梨ちゃん…お説教はまたあとで…ここお願いします…」
「杏を待った方がいいんじゃないか?」
「どんな人が侵入したかの偵察だけなら私だけの方が動きやすいですし…
それに感じる限りですが、どうも敵対するというよりは、迷い込んだって感じです…
とりあえず遊びながら様子を見てきます…」

今まで亜梨馬の説教を受けていた綾子は、立ち上がると先程変化をといた時のように、
煙と軽い爆発音の後、なぜか兎の姿に変化していた。
そして、そのまま外に出ると、尋常じゃない速さで侵入者への気配へ走っていった。

「早っ…流石の機動力と言うかなんというか…」
「兎狸っているんだね…海里…」

いつの間にか、海里の肩に乗っていたはずのなつが、
人間の姿のようになり、海里の隣に立っていた。

「あれ?珍しいねなつちゃん…人を驚かす以外で大きな姿って…」
「うん、琉紅ちゃん…さっき綾ちゃんからもらった生気、結構強かったみたい…」

どうやら、綾子が先程なつに土産と言って渡した人間の生気が、綾子の力も混ざっていたのか、
結果としてなつに多くの力を分け与えることになったようで、猫の姿では受け止めきれなかったのか、
満足そうな表情を浮かべながら、なつは人間のような姿をした。

「多分すぐ消化するし、すぐ戻ると思うよ…結構人の形してるの疲れるし…
それに、今回の迷い込んだのが人間だとしたら、せっかくだし生の生気直接ほしい…
だから、今のうちに消化しておかないと…」
「でも、迷い込んだのが人間とは限らないんじゃないかしら、なつ?」
「あ…そっか、それもそうだね海里…消化やめようかな…」
「いや、迷子狸の生気じゃ消化不良起こすかもしれないし、しといたほうがいいと思うよ?」
「また、そんなこと言って亜梨ちゃん…実際本当は心配で仕方なかったくせに…」

本当は、旅をしている綾子を心配しながらも、どうしても小言が先に出てしまう亜梨馬の心情を知っているのか、
海里が意味ありげに亜梨馬に声を掛けると、亜梨馬は図星をつかれたからか、少し赤面して海里を睨んだ。

「海里…今すぐ成仏したい?」
「ごめんなさい。それだけは勘弁して…私だって、ここ気にいってるし…」
「亜梨ちゃん!海里ちゃんを成仏させちゃだめですぅ!」
「ちょっ…しないから、泣くな琉紅…」
「だって…亜梨ちゃんが怖いこと言うからぁ…」
「悪かったって…」
「なんか、私死んでからネコ科の妖怪さん達に好かれてるわ…」

隣に立つ猫のような、すねこすりのなつと、腕にしがみつく化け猫の琉紅に挟まれ、
海里はどことなく嬉しそうにつぶやいた。


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