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Ep.4 白竜の魔導士




「――それで、俺にもそのフィクシドスターとやらを探すのを手伝って欲しいと。そういう事か?」

『最終的にはフィクシドスターの封印を解いた奴を捕らえることにもなるわ』


アンタレスとの戦いのあと
亜梨姉に今までの経緯やミリィのことを説明した
最初は怪しんでたけど、実際に亜梨姉も魔力を使ってしまったのだから信じざるを得ない様子だった



「私からもお願い、亜梨姉…今はきっと人数が多いほうが良いと思うの」

『それに、8人揃わないと封印が出来ないわ。貴女の力が必要なの』


亜梨姉はうーん、と唸って何かを考えるような仕草をし、黙ってしまった



「――――いいよ。その封印ってやつ、手伝ってやる。実際、その力に助けられた訳だしな…」


亜梨姉はそう言って笑った
それから、ふわりと私の頭を撫でる


「それに、梅流の頼みを断る訳にはいかないからな」

「あ、亜梨姉〜〜〜!!」


嬉しさの余り、亜梨姉に抱きつく
血は繋がってなくても亜梨姉は私にとって最高のお姉ちゃんだもん!


こうして新たな仲間に亜梨姉が加わった
あのアンタレスと戦った時に思ったけど――フィクシドスターは会う度に強くなっている気がする
早く新しい魔導士も見つけなくちゃ…!













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――――漆黒の闇が辺りを包む
頼りになる明かりは月が照らす光だけ

その空間のとある廃ビルの屋上

そこに2人の少女がいた

どちらも短い黒髪を持ち、片方の少女は目が燃えるように紅い色をしている
彼女達の周りを伺うように白い竜が旋回している



「――――“魔導士”がいる?私たちの他にも?」

『ああ。それも、どちらも強力な…』



「“どちらも”ってことは…1人だけじゃないってことですね」


少女の問いかけに白竜は頷く


『――先にフィクシドスターを集めないと。あれには魔導士の力を増幅させる力がある』

「どんな子が魔導士だったか、までは解らないの?」

『俺もアンタレスと戦ってるのを見ただけだから、名前までは…』

「魔導士の使い魔は2人につき1匹が限度…既に僕達と契約している幻鬼には、やっぱりそこまでは解らないでしょうね」

「やっぱり…戦わなくちゃいけないんだよね」


1人の少女がポツリと呟く
その言葉に真紅の瞳を持つ少女はそれを宥めるように少女の肩に手をおいた


「大丈夫。これまでだって、色んなフィクシドスターと戦ってきた。それに…杏と一緒なら、負ける気はしないよ」

「崇樹…」


“杏”と呼ばれた少女は不安そうな瞳を紅い瞳の少女――もとい“崇樹”に向ける
杏を安心させようと崇樹はにっこりと微笑んだ


『そろそろ帰ろうぜ、2人とも…明日も学校があるんだろ?』

「うん…そうだね」

「それじゃ、また今夜ここで…」


互いに頷き合って3つの影はバラバラに廃ビルを去って行った――――――














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ミリィと出会って3日目…
明日は魔導士になってから初めての休日だ




「――――あ、もしもし、亜梨姉?」



ミリィにたまには羽根を伸ばすように勧められた
確かに、息抜きも必要だよね
そう思った私たちは久しぶりに亜梨姉と、仲の良かった幼なじみ達と遊ぶ事にした
でも決して気は抜かないように…



「うん、うん…わかった、駅前で待ち合わせね。それじゃ、おやすみなさーい」

『あら?麻菜達と遊ぶの?南野くんじゃなくって?』


いきなりミリィがそんなこと言うもんだから危うく持っていた携帯電話を落とす所だった


「な、なななななんで南野君が!!?南野君はただの友達で…っ!」

『そうだったの?なんだかいい雰囲気に見えたからてっきり恋人かと思っちゃった』


恋人とか…全然そんなんじゃないよ!
確かにかっこいいし、その…恋愛的な意味で、好きではあるけど…
この想いが成就するとは思えないし、南野君も私なんか眼中にないだろうし…
それに、あんなにかっこいいんだから可愛い彼女の1人くらいいても不思議じゃない
うぅ…なんかそう考えたら泣きそうになってきた…


『まぁまぁ、そんなに深く考えないでよ』

「もぅ…ッ!誰のせいだと思ってるのよぉ〜」


うだうだ悩んだって仕方ない
それに、今の私にとって大事なのは恋愛なんかじゃなくて、フィクシドスターを封印することだ
とりあえず、明日は羽根を伸ばしつつ、魔導士達の手掛かりも探さなくちゃ…!










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運良く晴れた休日だった
今日はミリィはお留守番…亜梨姉と共に駅へと向かう



「梅流ちゃん、亜梨ちゃん!」

「2人とも久しぶり〜!」


「杏、綾ちゃん!」

「杏とは久しぶりに会うな。元気だったか?」


駅で幼なじみ2人と合流する
大津綾子と、樋口杏
この2人も亜梨姉と同じく昔からの友達だ
綾ちゃんは亜梨姉と同じ中学校に通ってるけど、杏は私とも亜梨姉達とも別の学校に行ってしまった
それでも4人とも、未だに交流が続いている



「今日はどこに行こうか?」

「久しぶりに4人でカラオケ行かない?」

「いいね!梅流歌うの大好き〜」



フィクシドスターの気配は今の所感じない
ミリィのほうもそれは同じようだった
いつものように、穏やかな空気が流れて行く…



――カツーン…――

不意に何かが落ちる音がした
音から察するに、キーホルダーか何かかな?


「…?杏、何か落とした、よ…」


落ちた物を拾い上げてギョッとした
ハートの中に十字架の入ったチャーム…

これ、私のローズクォーツと亜梨姉のアメジストと同じ…!?



「あ、ありがとう、梅流ちゃん」

「あ…ううん…」


まさか、杏が新しい魔導士…!?
こっそり亜梨姉と目配せをする
亜梨姉もチャームをばっちり見たみたいだ




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