4-2




私は思い切って杏に聞いてみることにした
味方は多いほうがいいものね
きっと杏のほうからもフィクシドスターや魔導士の説明は受けているだろうから…


「杏、今のチャームって…」


私がそう言った途端、杏の表情が強張った
え…?ど、どうしたんだろ…?
あ、そうか、一般人に魔導士のことがバレたら大変だもんね
私は小声で杏に言った


「大丈夫、私も杏の仲間だから!」


それでも、杏の表情が晴れることはない
それどころか、今にも泣きそうな顔になって…



「――梅流!」

「え?…きゃあっ!?」


その時、私の目の前を白い何かが通って行った
その際に手の甲を引っ掻かれたみたいで僅かに血が滲んでいる


「幻鬼…!」

『杏、綾子!こいつらが先日言っていた魔導士だ!』


白い小さなドラゴンのような生き物がそう言った
それじゃあ、やっぱり杏も綾ちゃんも魔導士なんだ…
でも、どうしてこのドラゴンさんは私たちに敵意剥き出しなんだろう?


「ま、待って、私たち、あなた達に協力して欲しくて…!」

『その手には乗らない!杏も綾子も、早く変身を!』

「――待って、幻鬼!」


綾ちゃんがドラゴンさんの尻尾を掴む
幻鬼と呼ばれたドラゴンさんは少しだけ苦しそうに呻いた


「何かの間違いだよ!梅流ちゃんも亜梨ちゃんも、“そんなこと”するような子じゃない!」


幻鬼さんは怪訝そうな目で私たちを見やる


「あの…“そんなこと”って、どんなこと…?」

「…別の魔導士2人が、フィクシドスターを“アルギュロス”に流してるって…」

「アルギュロス?」


亜梨姉が眉間に皺を寄せ、疑問を口に出す


『アルギュロスは、フィクシドスターの封印を解いたといわれている妖怪達だ』

「そんな…私たち、そんなこと…!」



そう言おうとした時だった
――また、あの時と同じように空間が澱み、人っ子一人いなくなる
ひとつだけ違ったのは、そこに魔導士以外の第三者が紛れ込んでいた、ということだ




「――――魔導士同士、お友達だったか。そいつは残念だぜ」



その声にハッとして顔を上げる
そこには、銀色の髪を後ろで束ねた男の人がいた
頭には獣のような耳が、腰からは同じようにふさふさの尻尾が生えている


「互いに潰し合ってくれると思ったが…ちょっと無理そうだな」

『銀来…!お前、まさか嘘の情報を…!?』


あの男の人は銀来というらしい
銀来は薄く笑うと言った



「ああ、嘘の情報だ。こんなに簡単に騙されるとはな…」

『く…ッ!』


事も無げに言う銀来と悔しそうに唇を噛む幻鬼さん…
対する杏と綾ちゃんは先程に比べ、清々しい表情になっていた


「なーんだ、嘘だったんですね♪」

「でも、これで梅流ちゃん達と争わなくて済むね」


杏と綾ちゃんがチャームを取り出す



「エネルゲイア・エメラルド!!」

「エネルゲイア・サファイア!!」



翠色の光と蒼色の光とが――2人を包む
二つの光を身に纏い、魔導服が形成されていく

光が収まると、2人はキッと銀来を睨みつけた




「第三魔導士“杏”!手加減しないわよ!」

「第四魔導士“妖兎崇樹”!本気でいきますよ?」



「「私たちの友達を利用する奴は、許さない!!」」



「杏…綾ちゃん…!」

「梅流、俺たちも行くぞ」

「うん!」


「エネルゲイア・ローズクォーツ!」

「エネルゲイア・アメジスト!」



4人の魔導士が集う
銀来は小さく舌打ちをすると小さな宝石を取り出した
あれは…まさか、フィクシドスター!?


「お前らの相手は…コイツで充分だ!」


そう言って銀来が宝石を放り投げる
宙を舞ってる最中に宝石の形が変わって行く
次第にそれは大きな魚のような生物に姿を変えた
レグルスやアンタレスよりも何倍も大きい…!


『あれは、アルレシャのフィクシドスター!』


「行くよ、 みんな!」



バッと飛び上がりアルレシャへと向かう



「ブリザード・ブレイド!!」



紫の光に斬られた身体の一部が凍って行く
身体が凍ってしまったおかげで満足に動けない


「崇樹!!」

「まかせて下さい!」


瞳を閉じ、両手を前へと突き出す


「リーフ・バインド!!」


刺の生えた蔦がアルレシャに巻き付く
これで完全にアルレシャの動きは封じられた


「杏、瑪瑠ちゃん!」


「おっけー!セント・リングアロー!!」

「行くよ!アクア・キャノン!!」



アルレシャに桃色の光の矢と蒼い激流が襲いかかる
高威力の魔法を食らったアルレシャは悲鳴を上げ、光となって消えた
残ったのは、元の宝石の姿に戻ったアルレシャとそれを仕掛けた男、銀来だけ


「チッ…!なかなかやるな。次はこうはいかない…!」


そう言い残し、銀来は姿を消した


淀んだ世界は元に戻り、私たちも変身を解除する
そして、互いに顔を見合わせた


「疑ってごめんね、梅流ちゃん、亜梨ちゃん…」

『俺も…よりによって、妖狐瑪瑠に怪我させちまったし…』

「お前達が悪い訳じゃない…全ての元凶は、あの銀来とかいう男だ」



銀来…
何故、彼がフィクシドスターを復元出来るのか…
その答えは至極簡単だった





『妖狼銀来…アイツは恐らく、フィクシドスターを解放した者――アルギュロスの1人だ…!』







――――――残りの魔導士…4人





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