第参話
先程まで穏やかだった粉雪が、いつの間にか吹雪へと変わっていた
天候の法則が出鱈目な魔界ではよくある光景だったので特に気に留める者はいなかったが、その轟音にはなかなか慣れない
遠くの方では雷鳴が轟く音も聞こえてくる
瑪瑠「…で、どうする?みんな」
先程の祠から移動して、瑪瑠の部屋に移った8人はそれぞれ顔を見合わせる
広々とした瑪瑠の部屋は大理石に囲まれているため、声がよく響く
念の為、『八岐大蛇』達が仕込んだ盗聴器などがないか探したが、それらしい物は見つからなかった
良かったに越したことはないが、油断は出来ない
瑪瑠はなるべく小さな声で問い掛けた
海里「う〜〜ん…」
なつ「まずは、“八岐大蛇”の手がかりを探さないと…かな?」
杏「そも、“八岐大蛇”って日本神話に出てくる架空の蛇でしょ?スサノオがどうとか言う…」
崇樹「それを言ったら私達元も子もないですけどね…」
瑪瑠「うん…瑪瑠も最初はそう思ったんだけどね、万が一って事があるし…」
亜梨馬「他者の思想を具現化出来る能力者や魔具の可能性も無いとは言い切れない。魔界とはそういう所だ」
亜梨馬の言うことは尤もだった
ありとあらゆる“不可能”が“可能”になる世界だ
因果や世界の理等、無いも同然
そもそも、この魔界すら人間界の者にとってみたらお伽話に他ならない
だが、魔界や、そこに生きる彼ら――瑪瑠や蔵馬達は確かに存在するのだ
璃尾狐「白狐と銀狐の森周辺を護衛する組と、八岐大蛇について調べる組で分けるっていうのは?」
琉紅「あ、いいですね、ソレ…!」
璃尾狐の言葉に皆が頷く
なつ「どうやって分けるの?」
崇樹「ここは平等にクジビキで分けましょう☆」
瑪瑠「アミダクジもあるよ!」
亜梨馬「…なんでそんな用意周到なんだ、お前ら…」
崇樹と瑪瑠の提案により、さっそく『アミダクジ』でグループ分けを行う
その結果、調査・遠征組が瑪瑠、海里、なつ、琉紅の4人
近辺護衛組が亜梨馬、崇樹、杏、璃尾狐の4人に決まった
瑪瑠「あ、でも…遠征って蔵馬ももう行ってるんだっけ…」
海里「大丈夫大丈夫、瑪瑠ちゃんの蔵馬に手出しなんかしないから安心して!」
瑪瑠「ふぇえ!!??ち、ちょっと、しのちゃん…!!」
真っ赤になって慌てふためく瑪瑠
その様子に穏やかなムードが流れる
彼女はいつもそうなのだ
どんなに切羽詰まった状況でも、緊迫したムードでもたちまちあたたかな物に変えてしまう
彼女のそんな優しさに惹かれ、皆がここに集まったのだ
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