第四話



時計は先刻、丑の刻が終わりを告げた辺りだ
未だに吹雪の轟音が響き、窓を強く叩く

瑪瑠達8人は麓に言われるがまま地下倉庫へと向かっていた
固く閉ざされた扉の向こうには地下へと続く長い階段がある
長い間、此処に暮らしている瑪瑠だが、地下倉庫へ入る事はほとんど無い

暗がりの中を頼りない燭台の灯りが照らしている
ユラユラと揺れ、影を作り、それが一層視界の妨げとなった
足を踏み外さないように一歩一歩慎重に階段を下っていく


瑪瑠「麓兄、どうしたの?」


麓は瑪瑠達のほうをチラリと見ただけで、何も話そうとはしなかった
その憂いを秘めた麓の表情に首を傾げる瑪瑠

階段を下り終え、倉庫へと到着する
非常食や金庫等の貴重品が置かれた部屋は当然だが、暗く冷たかった
麓は指先に狐火を灯すと何かを探すように床を凝視した


麓「…此処だな」


徐に床へと手を伸ばし、凍りつきそうな程に冷やされた床石を外し始めた
吐く息も白く染まる中、大して苦しそうな表情も見せずに淡々とその作業を繰り返す

やがて一定箇所の床石を外し終えると何も芽吹かない焦げ茶色の土が現れた

更に近場に有った小さめの鎌でその土を削るように掘っていく
コツリと固い物に当たる感覚が鎌を伝って麓の手にも感じられた
周りの土くれを手で払うと、今度はその下に鉄製の扉が現れた


亜梨馬「麓…これは…」

杏「扉…?」


取っ手を掴みゆっくりと扉を上へと持ち上げる
その中は、人1人通れるか通れないかくらいの狭い階段が闇の中へと続いていた


崇樹「え…更に地下通路が…?」

瑪瑠「瑪瑠も初めて見るよ…麓兄、これって…」

麓「お前たち8人にこれから渡す物がある。…俺に続いて、下りて来てくれ」


そう言って麓は闇へと続く階段に足をかける
金属製の階段らしいそれは、金属特有の甲高い音を発していた

瑪瑠達は不思議そうに顔を見合わせたが、意を決したように彼に続いて階段に足をかけた

不安定な足場を降りると、広い鍾乳洞のような場所に出た
本来なら暗闇であろう、その世界は、まるで海の中から空を見上げたような蒼い光に満ちていた



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