壱拾参 戦闘




碧が華菜と不本意なデートをしている頃
紅光も琉那達との約束があり、家を空ける予定であった


玄関先で靴を履きながら、紅光は梅流に言った


「じゃあ、行ってきます」

「うん、気をつけてね」


ひらひらと手を振り、息子を見送る
扉を開けると眩しい日差しに肌がチリチリと痛んだ
一応日焼け止めは塗ってあるが、過信はしていられない
蝉の声が響き、日本特有のじめじめとした暑さが鬱陶しい


「ピカ!」

「琉那・・・」


背後から琉那に肩を叩かれ、そちらを見る
今日はいつもの制服姿と違い、白を基調としたワンピースにカンカン帽を被っている


「おはよう、今日もあっついわねー・・・」

「ああ 午前中でこの暑さなのだから、午後はもっと酷くなる可能性が高い」


紅光の言葉に琉那は顔をしかめた
夏の暑さが煩わしいのは皆同じのようだ


「――で、十干の所に行くんだっけ」

「ああ。彼処なら結界も強いし、いざという時に異空間に転移する事も出来る」

「そうね・・・ちょっと癪だけど」


十干の所、とは丁の家である十干神社の事だ
霊脈の活動が活発な森や建物は他にもあるが、如何せん距離がありすぎる為、丁の家が選ばれた


(あれ?でもこれって・・・十干の家に着くまで・・・)


ちらりと隣の紅光を見やる


(ピカと、ふたりっきり・・・)



無意識に頬が赤くなる
何度も紅光と二人きりになったことはあるのに、やはり慣れないものである

琉那はその考えを取っ払うように頭を振った
その様子に心配そうに琉那の顔を覗き込む紅光


「・・・琉那?」

「あ・・・ううん、なんでもない」



(・・・十干の家、もっと遠かったらいいのに)




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