「躱した、だと…?」


蛍明が呟く
この中で最高のスピードを誇る蓮の剣技を躱す事など有り得ない
だが、今目の前の出来事は紛れもない真実なのだ

瞬時に碧が人化の術を解き、妖狐へと姿を変える
全身から妖気を放ち、華菜を威嚇した
並大抵の妖怪なら立っていられない程の妖気を当てられても華菜は尚笑顔を絶やさなかった


碧の左手に蒼い炎が宿り、右手に茨で出来た鞭を携える
地面を蹴り一気に間合いを詰めるが、華菜は避けなかった

躊躇ってなどいられない
碧は勢い良く鞭を振りかざす


「薔薇棘鞭刃(ローズ・ウィップ)!!」


父親程ではないが、一振りでB級相当の妖怪を一瞬にして葬る事が出来る
本来なら風圧で傷ついてもおかしくない

しかし、碧は目の前の光景に眼を疑った


「な――…!?」


スルリ、と
鞭が華菜の体を――“すり抜けた”


「実体がない…!?」

「いや、そんな筈は…!彼女からは、ちゃんと生きてる人間と同じ気を感じるよ!最初会った時は曖昧で解らなかったけど…」

「寵、どういう事だ…」

「あの子は妖怪でも何でもない…ただの、人間なんだ…!」


もう一度、蓮が剣を構える
刃に魔界の炎が纏い、まるで蛇のように畝りながら華菜へと向かって伸びていく


「人間だろうと、構わん…領域の能力者達を忘れたか…!?」


蓮に叱咤され、寵がハッとする
かつて自身の父が戦ったという相手…人間にして領域(テリトリー)という特殊能力を持つ者達
妖怪だろうが悪魔だろうが、戦い方・能力によって封殺する事だって可能だ


「うーん…半分当たりで、半分ハズレかな?」


そう言って華菜はふわりと笑う


「ほざけ…!」


炎がうねり、華菜を締め付けるような動作をする


「だから、無駄だって」


蓮の背後から華菜の笑い混じりの声が聞こえた
避けるよりも先に、華菜が蓮の背中に手を置いた
そして――黒い水が蓮に襲い掛かった


「が…ッ!?」

「蓮!!」


碧の瞳がギラリと光る
拳に炎を纏い、そのまま華菜へと突っ込んでいく
華菜は碧の拳を寸での所で避けながら呑気な声で言う


「あははははは!!ねぇ、これって何の遊び?この後暇でしょ?ねぇ、また一緒にデートしようよ!」

「うるさい…!!」


両手を華菜に突き出し、炎を放出する
それを飛び上がって躱した華菜は木の上に飛び乗った



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