第6章 再生




蔵馬は白狐の森に向かっていた



白い装束と銀色の髪が、緑の木々の間を縫うように駆け抜ける




その様は、美しかった





走りながら、蔵馬は考えていた









(幽助にああは言ったものの・・・これで、あの森に足を踏み入れるのは何度目だろうか)






―――100回か、或いはもっと多いか・・・




その度に、『アイツ』の姿を探してしまう―――








居ない事は、分かっているのに









それでも探さずにはいられなかった


そして、何より彼は恐れていた





『彼女』の兄弟達に合わせる顔が無い、と







『彼女』が消えた時、蔵馬は何も出来なかった




守ることが、出来なかった








何度も『彼女』の兄弟に謝罪をした


その度に兄弟達は『蔵馬は悪くない』『誰にも、罪なんか無い』と言ってくれた



それが救いでもあり、戒めでもあった







(もう一度、もしも、あの頃に戻れるなら―――)






蔵馬は、ふと足を止めた







―――ふわりと、懐かしい香りが、鼻をくすぐった



「これは・・・・・」






全神経を研ぎ澄まし、辺りを見回す







その香と気配は、蔵馬が今目指している場所からしていた







風が、追い風に変わる








―――まるで、彼を急かすように










その瞬間、蔵馬は駆け出した












(間違いない・・・・・!いや、俺が間違う筈が無い・・・・・!!)







(この気配は・・・・・!)






立派な巨木を越えると、そこは白狐の森だった






森の先代の長達が奉られている祠を見る


そこには、驚いた表情の白狐の妖狐達と、1人の少女の姿があった




「く・・・・・」


汀兎が、そう言い掛けた時


蔵馬は、梅流を抱き締めた









「!・・・・・え・・・っ!?」


突然の出来事にドギマギする梅流



抱き締められる腕に力が籠る




(あ・・・・・この匂いって・・・)



ふんわりと、薔薇の香りが漂った

抱き締められても嫌ではなく、むしろ安心する


不思議な気持ちだった


「梅流・・・・・!」



よく通る綺麗な声が何度も、そう呟く



梅流は、その心地良さと見知らぬ懐かしさで瞼を閉じた







―――自分でも気付かぬ内に、涙を流していた






蔵馬は腕の力を弱めずに、呟いた









「今度こそ・・・・・守ってみせる。・・・この命に代えてでも」






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