第5章 贖罪
―――なんとかする
―――オレがやらなくちゃいけない
・・・・出来るのか?
この罪を犯したオレに
でも、何をどうしたらいいのかわからない
どうしたら、この罪が贖えるのかわからない
なぁ、神様とやら
アンタが本当に存在するなら
そこに在る真実を、蛇に騙されたオレに教えておくれ
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――――――――――――――――
「何の用だ」
「察しが早くて助かるねぇ」
「・・・何の用だ。俺は何も知らん」
丁度昼寝をしていた飛影を捕まえた
本人は鬱陶しそうに幽助を見やる
鼻から幽助に協力する気のない彼は、寝転んだまま答えた
白を切り通す飛影に幽助が詰め寄る
パサリと、無造作に伸びた髪が飛影の頬に触れる
「・・・蔵馬に『自分でなんとかしろ』と言われたんだろうが」
「やっぱり分かってんじゃねーか。嘘吐くなコノヤロウ」
「俺の質問に答えろ」
幽助はやれやれと言うように飛影との距離を開け、拗ねるようにそっぽを向いた
「・・・あの御狐様は、いつも無理難題吹っ掛けやがる。オレが出来ない、わからない事を知ってて言って来やがる。楽しんでんだ、オレの反応を」
「・・・だろうな」
自身の妹の事を、目の前にいる馬鹿な魔族が狐にばらした時の事を思い返す
・・・なんだ、その顔は?
なんだその視線は!?なんだその笑みはアアアアア!!?
―――分かっている
昔からの付き合いだ
ヤツの性格は、充分把握している
アイツはそういうヤツだ
・・・どういうヤツかって?
そうだな、オレも自分の命が惜しい
『いけ好かないヤツ』とだけ言っておこう
・・・さて、本題に戻ろうか
幽助は向こうを向いたまま、こちらを見ようともせずに続けた
「でも、さ・・・今回はさ、違うんだよ」
「・・・・・・」
「今までみたいに、からかいとかじゃないんだ。なんつーか・・・蔵馬さ、今回はマジで切羽詰まってんだよ」
「・・・それで?」
言いたいことはそれだけか、とでも言いた気に先を促す
「本当に切羽詰まってるから、オレにあんな難題吹っ掛けたんだよ。・・・でもさ、オレ分かんなくって。『アイツ』も見失っちゃったし。・・・オレのせいなのに、何も出来なくて」
「それで、愚痴と弱音を吐きに来たのか?」
幽助は勢いよく振り返り飛影の胸倉を掴みあげる
「弱音は吐いたけど愚痴は言ってねーよ!!!」
「認めるのかよ」
相変わらず飛影は表情を変えない
しばらく幽助と飛影の無言の睨み合いが続く
―――折れたのは、飛影だった
「『アイツ』を探すだけだからな。その後は知らん」
その台詞に幽助の顔がパァッと明るくなる
つい先程まで、飛影を睨み付けていた表情とは大違いだ
「サンキュー、飛影!!」
「・・・で、お前は結局何しに来たんだ。俺の眼を頼むだけではあるまい。まさか本当に弱音を吐きに来たのか?」
やや考えてから幽助が答える
「・・・・・・そうかもな」
「・・・呆れたヤツだ。いや、それ以前にふざけたヤツだ」
「どう思われても結構!これでも一応感謝してんだぜ?」
「オレはお前のパズルを解く為の道具じゃない!」
「ありがとな飛影!でもその台詞、どっちかと言ったらオレの台詞だから!」
不意に風が強くなる
蔵馬のほうは、上手く行っているだろうか
取り越し苦労かもしれないが、そう思わずにはいられなかった
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