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魔界の中では、比較的穏やかな森の中で『彼』は立っていた




鬱蒼と生い茂る木々を、生暖かい風が撫でて行く


その度に、枝は揺れ、まるで何かの腕のようだ




風が木々と同様に『彼』の銀髪を弄ぶ


不意に、『彼』は小さな溜め息を吐いた


そして、呆れたように呟く







「――何の用だ?」



後方から、1人の少年が現れた


翠に光る、黒髪の長髪

そして、身体に刻まれた紋様





少年は悪戯っぽい笑みを浮かべると『彼』に近寄った







「相変わらず鋭いな。いつから気付いてた?」

「フッ、白々しい。俺に気付かれる為に、妖気を洩らしていただろう?」

「はは、さすがは妖狐様だな」


そう言って少年は笑った



しばらくして、『彼』の眼が真剣さを帯びる




「――で?今回の事はどうするつもりだ?」


そう言われて、少年の顔から笑みが消える


『彼』の威圧のおかげで眼のやり場が無くなり、地面を見るしか無かった






「…分かんねー。でも、オレが何とかしなきゃっていうのは分かる」

「出来るのか?今のお前に」





その問いに、少年は口ごもる。



「わ…」

「『分からない』、では済まされないぞ?」




そう言って、今度は『彼』が悪戯っぽく笑った





「…わ…分かるように、する」

「『する』じゃなくて『分かって』くれ」


そんな事は言われないでも理解している

だが、それに辿り着くまでが大変なのだ





――特に、『今回』は少年にとって、最も難しい問題になってしまったのだから









「…なぁ、本当に、ごめんな。瑪瑠のこと…」




少年が俯き加減で『彼』に懺悔する


『彼』はそれを聞くと、少年の右頬を抓った


「いてぇー――!!!!」

「当たり前だ、痛くしたんだからな。…その事は言わない約束だっただろう?破ったお前が悪い」




少年の右頬を開放する

赤く染まった右頬を涙目で撫でる少年


そして、怨めしげに『彼』を睨んだ後、諦めたように小さく笑った



「…分かったよ。オレも、もう一度あの森へ行ってみる。お前はどうする?」

「そうだな…オレも、一旦『白狐の森』に戻るよ。希望は捨て切れないからな」

「ん、そっか。じゃあ、お互い結果は後で連絡するって事で。…頑張ろうぜ、『蔵馬』」

「…ああ、そうだな。良い結果になる事を期待しているぞ、『幽助』」








そう言って、2人は別れた



運命が蔵馬を翻弄するまで、後少しだった





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