第15章 Innocent starter


「あなた…は…?」


恐る恐る梅流が問い掛ける
それに応えたのは少女では無く、琉紅だった


「さ…裟羅…!」

琉紅の声には、僅かな怯えが含まれていた


「裟羅…?」


その名前は、最初に麓達に会った時に聞かされたものだった
自分の記憶を奪い、白狐の森を襲ったという、『金猫の森』の長―――



「そう。私、裟羅。金華猫っていう、猫の妖怪」



裟羅は右腕を上げると光の灯らない瞳で梅流達を見た


「恨むなら、蔵馬のお友達を恨んでね?」

「蔵馬のお友達って?」

「ああ、今のアンタは知らないか…雷禅の息子よ。食人をやめた妖怪の王様。諸悪の根源はアイツなの」


食人をやめた魔界の王
その話なら、梅流も聞いた
だが、その息子が何をしたのかまでは知らない
琉紅のほうを見るが、琉紅も何も知らないようだった

裟羅の右手の爪がメキメキと音を立てて長くなる


「…ッ!?」

「全部全部……!!アイツが悪いんだから!!!!」


裟羅は鋭利になった爪を構えて、梅流の元へ向かって行った



「梅流!!!」

「きゃあああああああああ!!!!」


ギュッと眼を瞑る
その時、梅流の持つ琥珀が強い光を放った

キィンッという金属特有の音がする

いつまで経っても痛みは来なかった


眼を開けると、目の前にあったのは白銀色の光の壁だった


「え…!?」

「ぐ…ッ!!さすが、記憶は消せても能力は消せないか…!!」


ギリギリと裟羅の爪と壁とが擦れる
力づくでは破れないと悟った裟羅は腕を引いて壁から離れた


「今の、何…?」


琥珀を見ると、鈍く光っていた


「今の、この琥珀がやったのかな…?」

「ううん、今のはきっと梅流本来の力だよ…その琥珀は、きっとその手助けをしてくれたんだよ」


裟羅は舌打ちをすると梅流達を睨みつけた
右腕を高く掲げるとその拳に金色の光が宿った
その光が瞬くのに呼応するかのように、梅流達に雷の雨が降り注ぐ

「きゃ…ッ!!」

梅流達の周りにドーム状の壁が現れる
雷の雨はバチバチと爆ぜながら、壁に衝撃を与える

「だったら接近戦をしなければいいだけの話…その壁だけで、いつまで持つかな?」

「うぅ…ッ!!」

ピシピシと壁に無数のヒビが入る
壁がそう長くは持たない事は、梅流にも琉紅にも解っていた

そして、一際大きい稲光が降り注いだ瞬間…




『パリィィィィン…!!!!』



硝子が割れるような音が響き、壁が破られた
雷は、もう目前に迫っていた
避けようにも、避ける事が出来ない




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