「梅流!!!」



バッと琉紅が、梅流に覆い被さる
刹那、少女の悲鳴が聞こえ、焼けるような匂いが鼻腔を突いた
琉紅の身体が小さな獣に戻って行く

黒い煤に塗れた獣が、力なく地面に転がり落ちた


「琉…琉紅…?」

震える手で琉紅を抱き上げる

「よかった…梅流…無事、で…」

「そんな…!嫌、嫌だよ、琉紅…!」

「わたしね…ずっと、梅流に憧れてた…梅流に、たすけてもらったあの日から…」


僅かに琉紅が痙攣する
梅流の眼に涙が浮かぶ


「だから、きめた…こんどは、わたしが、めるを…たすけ、るって…」

「琉紅…!!」

「める、いきて…、くらまは、あなたをまってる…わたしも、あなたに、もういちどあいたい…そしたら、」









――――そしたら、また、あなたの笑顔を見せて…









カクン、と重力に従って頭が下がった
それきり、琉紅は動かなくなった



「る……琉、紅……?」




いつか見た光景が、脳裏にフラッシュバックする


ひとりぼっちの、小さな獣

その子にあげた、友情の印

紅い宝石の下に交わした、約束――――






『これ、なに?』

『お守りだよ。瑪瑠が作ったの!』

『どうして、私にこれを?』

『たとえ離れ離れでも、そのお守りが琉紅を守ってくれるようにって。

いつでも、あなたの側に居るって。だから、忘れないで、琉紅。あなたは、ひとりじゃない』


『私も・・・』

『琉紅?』





『私も、瑪瑠が困っていたら助けてあげる!』












――ようやく、思い出した一つの欠片…


その欠片が梅流に力を与える


琥珀が光り輝き、梅流の身体を包み込む


「な…ッ!?」


裟羅が眩しさに顔をしかめる

梅流の漆黒の長い髪はみるみる内に短くなり、肩辺りでその動きは止まった
黒から、白い色へと変わり、白銀の耳と尾が生える
彼女が身に纏っていた衣服は純白の白い装束へと変わって行く

閉じられていた瞳を開ける
その瞳の色は、金色の光を称えていた



「ま…まさか、いや、そんな筈…!!」


梅流の変貌に裟羅が動揺の声を上げる
だが、すぐにいつもの様子を取り戻すと、小さく笑った







「……お久しぶり、妖狐“瑪瑠”」






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