第16章 蒼い焔を宿す瞳



「―――見てたのか、飛影」


妖狐姿から元に戻った蔵馬がそう言った

飛影はフン、と鼻で笑うと蔵馬から視線を外す


「さっさと戻ったらどうだ…」

「…ああ、わざわざ済まなかったな」



蔵馬はそう言って笑うと白狐の森へと向かった













・・・・・・・・・・・・・・・・・・














「お久しぶり…“妖狐瑪瑠”」


裟羅がそういうと、瑪瑠はキョロキョロと周りを見渡し、自分の手や衣服を見た


「えっ?えっ?な、なにこれ、どうなってるの??」


その様子に裟羅は怪訝そうな表情を浮かべる


「まさか…変わったのは見た目だけってヤツ?」

「し、知らないよぉ〜…!」


今にも泣きそうな表情の瑪瑠
だが、“ここで怯んではいけない”、と拳を強く握り締める


「記憶がそのままなら好都合…!尤も、記憶を取り戻したとしてもアンタが私に勝てるとは思えないけど」

「そんなの…やってみなくちゃ解らない!」


無我夢中で瑪瑠が裟羅の元へ向かって行く
裟羅の鋭利な爪がそれを迎え打つ

寸での所で裟羅の爪を避けると高く飛び上がった


「うわ…っ!すごい…!」


記憶がない瑪瑠は、高く飛び上がるのは初めてだ
その脚力に感嘆の声を上げる
空中で体勢を立て直し裟羅に向かって掌を向ける
その掌から蒼色の炎が舞い上がる
瑪瑠の白銀の髪に蒼い光が映り、きらきらと輝いた
裟羅もそれに応戦し、右手をかざす
蒼い炎と金色の雷がぶつかり、相殺される
辺りに大きな爆撃音が響いた


「あれは…!!」


爆撃音を聞いた汀兎や流蘢が祠からこちらを驚いた様子で見ている



「……瑪瑠!?」


今まで自分たちが探していた、妹
それが今目の前にいる
だが、今彼女は彼等の最大の敵と戦っている最中なのだ



「どうしよう、瑪瑠が…!」

「待て、汀兎!」


助けに行こうとした汀兎の肩を麓が掴んで止めた



「瑪瑠は、今…きっと一人で戦わなくてはならないんだ」

「ひとりで…?」

「自分で、大切なものを…取り戻すために!!」



瑪瑠の尾に蒼い炎が灯る
それを大きく振ると、蒼炎の帯が出来た
瑪瑠の指示に従って裟羅の元へと向かって行く



「…チッ!」




小さく舌打ちをして裟羅が爪を長く伸ばし、向かってくる炎を切り裂いて行く
その爪は瑪瑠を突き刺さんばかりに伸びる


「…ッ!」



寸での所でよける
だが、完全には避けきれず裟羅の鋭利な爪は瑪瑠の肩と腰を深く抉った



「あぁ…ッ!!」



肩を抑えてガクンと膝をつく
殺気を感じて顔を上げると、裟羅がこちらを見下ろしていた





「…これで…終わりにしてあげる」






裟羅の腕が雷を纏う
この森を、焼き付くさんばかりの勢いだ

裟羅の拳が振り下ろされ…













瑪瑠を、金色の雷が包んだ







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